完全復活できるのか。大相撲の大関貴景勝(22=千賀ノ浦)が夏巡業を全休する見通しとなった。貴景勝は右ヒザの故障のため、カド番で迎えた7月の名古屋場所を休場。次の秋場所(9月8日初日、東京・両国国技館)は関脇に陥落することが決まっている。大関復帰には来場所で10勝以上が必要となる中で、夏巡業も不参加なら調整に遅れが生じる可能性もある。


 貴景勝が所属する千賀ノ浦部屋は31日に稽古を再開した。部屋の若い衆が四股などの基礎運動で体を動かしたが、貴景勝は最後まで稽古場に姿を見せることはなかった。師匠の千賀ノ浦親方(58=元小結隆三杉)は本人とは電話で連絡を取り合っているとした上で「(右ヒザの)治療とリハビリをしている。日に日に良くなっていると思う」と現状を説明した。

 一方で、夏巡業の参加については「巡業は全く考えていない。中途半端に行っても…。出るとしても取組はできない。土俵入りだけとかになる」と現時点では否定的な考えを示した。5日から千葉県内で行う部屋の合宿にも同行しないという。

 ただ、貴景勝が7月場所の休場を決めた当初、師匠は「(夏巡業に)途中から出そうと思っている。(巡業の稽古で)少しでも関取衆と体を触れることも大事」と話していた。さまざまなタイプの関取衆が顔を揃える巡業は、実戦的な稽古を積む絶好の機会でもあるからだ。今回の師匠による見解は、その方針を“下方修正”した格好。千賀ノ浦親方は「特に押し相撲は、なかなか相撲勘が戻りづらい。(本番で)どれくらい相撲勘が戻るか」と調整の遅れによる影響も否定しなかった。

 秋場所で大関に復帰するためには10勝が必要となる。ただでさえハードルが高いというのに、貴景勝は5月の夏場所で右ヒザを痛めて途中休場してから、4か月近く本場所の土俵から遠ざかることになる。千賀ノ浦親方は注目の秋場所に向けて「もちろん出場します。本人も出たいだろうし、私も出す方向でいる」と明言したが、ブランクを埋めることは簡単なことではない。

 名古屋場所では横綱鶴竜(33=井筒)が復活優勝。V争いで一騎打ちを演じた横綱白鵬(34=宮城野)とともに、世代交代の波を押し戻した。次世代を担う貴景勝は、再び看板力士の地位に返り咲くことができるのか。それとも…。今後の動向に注目が集まる。