米プロバスケットボールNBAのドラフトでワシントン・ウィザーズから1巡目指名(全体9位)を受けた八村塁(21=ゴンザガ大)が“各界”から熱視線を集めている。大相撲名古屋場所(7月7日初日、愛知県体育館)の新番付が発表された24日、5月場所で優勝した幕内朝乃山(25=高砂)は同じ富山県人としてライバル心を燃やし、新入幕の貴源治(22=千賀ノ浦)は中学時代に八村から直接“スカウト”された秘話を披露した。さらには「アジアバスケ界の雄」も大注目。空前の八村フィーバーは盛り上がる一方だ。

 この日、5月場所で優勝した朝乃山が愛知・蟹江町の部屋宿舎で会見。同郷の八村が話題に上ると、口調は自然と熱を帯びた。「八村選手が出てきたことで、僕の優勝は消された(笑い)。僕が優勝した時と同じで(地元紙の)号外が出て、すごいなと思った」と言いつつ「刺激になった。八村選手は年下なので、同じ富山県のアスリートとして負けたくない」とライバル心を口にした。

 朝乃山の優勝は富山県出身者では元横綱太刀山以来103年ぶりの快挙。地元富山で16日に行われた優勝パレードには2万5000人が集まるなど、一躍郷土の英雄となった。ところがその4日後の20日にNBAドラフトで八村が日本人で初めて1巡目指名されると、今度は八村に注目が集中。主役の座を奪われた格好の朝乃山は対抗心を燃やしている。

 新入幕の貴源治も愛知県体育館で会見。中学時代に双子の兄の十両貴ノ富士(22=千賀ノ浦)とともにバスケ部で活躍した当時を次のように振り返る。「八村選手は手が長くて、カットされないはずのパスがカットされた。(中2の)2月に試合をして互いに(身長が)185センチぐらいだったのに、5月には向こうが195センチくらいあって普通にダンクシュートをしていた。成長の仕方が全く違う」

 一方で「中学の時から自分と兄貴(貴ノ富士)は大学生にも当たり負けをしなかった。八村選手とのマッチアップ(1対1)でも自由にはさせなかった」と自負する。八村にとっても双子の兄弟は一目置く存在だった。貴源治は「(八村と)よく話した。『高校でもバスケを続けるなら同じ高校へ行こう』と言われて、一緒に行きたいと本気で考えた」と明かした。

 最終的に貴源治は兄の貴ノ富士とともに角界入りすることを決めた。それでも、バスケへの強い思いは今も変わらない。貴源治は「(八村が)NBAに行けて、本当にうれしい。いい刺激を受けた。(今場所は)ビッグマウスと思われるかもしれないけど、優勝を狙っていく。常に一番上(横綱)を見て取り組んでいきたい」と言い切った。

 角界では白鵬(34=宮城野)と鶴竜(33=井筒)の両横綱をはじめ、入門前のバスケ経験を経てNBAファンになった力士は少なくない。今回の八村の快挙は、意外なことに土俵にも大きな刺激を与えることになりそうだ。