【大相撲観戦】トランプ狂騒曲の舞台裏 握手おばちゃん&偽トランプの正体

2019年05月28日 11時00分

米国大統領杯を満面の笑みで持ち上げるトランプ大統領

 まさにカオスだ。大相撲夏場所千秋楽(26日、東京・両国国技館)にドナルド・トランプ米大統領(72)が来場。「令和」の新元号で最初の国賓警護のために厳戒態勢が敷かれ、大相撲の聖地は物々しい雰囲気に包まれた。手荷物検査を待つ一般客が長蛇の列を作り、1時間以上も待たされるなど混乱が生じた。さらに国技館周辺には“ニセ・トランプ”が出現。館内への入場を試みたが、未遂に終わる一幕もあった。国技の殿堂を席巻した「トランプ騒動」の舞台裏を追った。

 普段は厳粛な雰囲気で迎える本場所の千秋楽が、物々しい空気に包まれた。国技館の入場門付近には手荷物検査場と金属探知機が設置され、朝8時の開場前から数十人の警察官が待ち構える厳戒態勢が敷かれた。一般客はカン、ビン、ペットボトルの持ち込みが禁じられ、紙パック入りの飲み物も警官の目の前でひと口飲むことが求められた。

 また、入場客に配布された「ご注意」と題した用紙には「場内で座布団等の物を投げるなどの行為を行った場合は退場の上、処罰されることがありますので、絶対にしないでください」「《刑法208条暴行罪》二年以下の懲役もしくは三十万円以下の罰金」などの“警告文”が記されていた。前日14日目(25日)に横綱鶴竜(33=井筒)が敗れた際には、座布団が乱舞したばかり。これもトランプ対応ということか。

 国技館の中も、普段とは違った。午前中から警官や米国側のSPと見られる背広姿の屈強な男が巡回し、監視の目を光らせた。売店や相撲案内所で販売されるビールやジュースなどの飲み物は紙コップで提供された。そんな中で、利用休止となった清涼飲料水の自動販売機にはなぜか筆書きで「休場」の張り紙が…。シュールな光景だ。

 午後になると、手荷物検査を待つ一般客の渋滞が発生した。行列は近隣の江戸東京博物館方面にまで伸び、中には1時間以上も待たされて横綱土俵入りや目当ての取組を見られないファンもいた。普段は“顔パス”の親方衆も特別扱いはなし。入場時に金属探知機のチェックを受け、大統領が出入りに利用する地下エリアの一部も立ち入りが制限された。

 混沌とした状況で、国技館周辺では“ニセ・トランプ”も出現した。大領領に扮するのは、日本在住のユーチューバーだというジョニーさん。千秋楽の当日券を求めて早朝から窓口に並んだが、売り切れで購入できず。「チケットを買えなかった。大統領が来るころまでは、この辺りにいるつもり」と流ちょうな日本語で話し、本物との“対面”を果たせずに残念そうな表情を浮かべた。

 そのトランプ大統領は午後5時前、安倍晋三首相(64)らとともに場内に登場。正面升席の最前列に設置された専用イスに着席し、結びまでの5番を観戦した。表彰式では、神聖な俵に触れないため、協会特製の足場を使って土俵上へ。革靴のまま上がったように見えたため館内はどよめいたが、協会が用意した“革靴もどき”の黒のスリッパだった。

 初優勝を飾った幕内朝乃山(25=高砂)の前で英語で表彰状を読み上げ、「アメリカ合衆国大統領杯」を授与したが、表彰状を片手で渡す“トランプ流”。引き揚げる際にはNHKが「一般のお客さんと握手をしています」と放送したが、そこにいたのは安倍首相に近いジャーナリストの櫻井よしこ氏(73)と評論家の金美齢氏(85)、作家の門田隆将氏(60)らだった。

 大統領の登場から退場まではSPが観客席や通路、階段などいたるところから厳重に警戒。結局、座布団が投げ入れられるなどのアクシデントもなく無事に終了した。国技館を後にしたトランプ大統領は、その後の安倍首相との夕食会で「(大相撲観戦を)本当に楽しんだ。ずっと相撲を見たかった。素晴らしい」と話したが…。今回の観戦で角界全体が振り回されたことも確かだ。

 関係者の間からは困惑や不満の声が上がった。親方衆の一人は「ここまでやる必要があったのか。お客さんが気の毒だ」。ある関取も「制限だらけで、相撲に集中できない」と本音を漏らした。幸いにも不測の事態が起きなかったとはいえ、新元号の「令和」で迎えた最初の本場所は何とも言えない微妙なムードが漂ったままで幕を閉じた。