【大相撲夏場所】貴景勝 師弟関係の希薄さ露呈した“休場騒動”

2019年05月20日 11時30分

碧山(奥)にはたき込まれた貴景勝は、ばったりと両手をついた

 まさかの迷走だ。大相撲夏場所8日目(19日、東京・両国国技館)、新大関貴景勝(22=千賀ノ浦)が小結碧山(32=春日野)のはたき込みに屈して黒星を喫した。これで3勝3敗2休。序盤戦に右ヒザを痛めて5日目から休場し、この日から再出場したが、9日目の20日から再び休場することになった。横綱大関の再休場は極めて異例。前代未聞の“休場騒動”の裏側を追った。

 貴景勝の再出場に至る経緯は次の通り。4日目(15日)の取組中に右ヒザを痛め、日本相撲協会に「右膝関節内側側副靱帯損傷、約3週間の加療を要する」との診断書を提出。5日目から途中休場した。師匠の千賀ノ浦親方(58=元小結隆三杉)は「(無理をすれば)後々に響く。再出場は全く考えていない」と断言していた。

 ところが、貴景勝は6日目(17日)の深夜に痛みがなくなったことを理由に戦列への復帰を直訴。師匠も本人の意思を尊重し、8日目からの再出場が決まった。大関の再出場は1951年1月場所の汐ノ海以来、実に68年ぶりのことだ。この日は部屋の朝稽古を欠席して治療に専念。普段はしないテーピングを右脚に施して“ぶっつけ本番”で取組に臨んだ。

 しかし、碧山に変化されると右足の踏ん張りがきかず、はたき込まれてばったり両手を土俵についた。それでも、取組後の貴景勝は「(踏み込みの感覚は)いつも通り」と相撲に影響がないと強調。再出場の理由を問われると「自分の中で出られると思った。自分の体は自分が一番知っている。休むのは簡単。それでは精神的に成長できない。明日以降? 全部勝つ」と言い切った。

 とはいえ、この日の黒星で3勝3敗2休となり、勝ち越すためには残り7日間で5勝が必要。次の名古屋場所(7月7日初日、愛知県体育館)はカド番で迎える可能性が高まった。今回の“迷走”の背景の一つとして指摘されるのが、師弟関係の希薄さだ。貴景勝は昨年9月場所後の貴乃花部屋の消滅に伴い、現在の部屋へ移籍。当初から現師匠の千賀ノ浦親方は本人の自主性を最大限尊重する意向を示してきた。

 しかし、大関昇進後に迎えた4月の春巡業で“本人任せ”の弊害が顕在化。貴景勝は調整不足を理由に巡業中盤以降まで関取衆と本格的な稽古を行わなかった。看板力士とはいえ、22歳で幕内最年少の若手。稽古をしただけ力がつく年齢でもある。巡業部の親方の一人は「本人には『稽古しろ』とは言ったんだけど…」と複雑な表情を浮かべていた。

 仮に前師匠の貴乃花親方(46=花田光司氏)が巡業部長を継続していたとしても、貴景勝は同じ稽古態度を示していたのか。その点でも、疑問が残ることは否めない。いずれにせよ、本場所への出場の可否を含めて、重要な判断の大半が貴景勝本人に委ねられている現状がある。今後に向けて不安点がくっきり浮き彫りとなった格好だ。