大相撲夏場所4日目(15日、東京・両国国技館)、新大関貴景勝(22=千賀ノ浦)が小結御嶽海(26=出羽海)を寄り切って3勝目を挙げたが、取組中に右ヒザを痛めるアクシデントが発生。16日早朝に病院で検査を受け5日目からの休場を決断した。新大関を襲った“不測の事態”の裏側とは――。

 新大関がアクシデントに見舞われた。前日3日目(14日)に今場所初黒星。しかもこの日は過去5連敗中の相手で、絶対に負けられない一番だった。立ち合いから一気に押し込めずにもろ差しの体勢に持ち込むと、上体を反らせて抱え込みながら寄り切った。直後に右ヒザを押さえながら苦悶の表情を浮かべ、土俵に両手をついて体を支えるしぐさを見せた。

 支度部屋に戻ると風呂には入らず、氷で右ヒザにアイシングを施した。報道陣からの問いかけには「右ヒザ? 大丈夫です。寄ったときに痛めた? 大丈夫」と同じ言葉を繰り返したが、最後まで険しい表情を崩さなかった。国技館から引き揚げる際には、痛めた逆側の左足から慎重に階段を下りる場面もあった。

 さらなるレベルアップのための試行錯誤が“裏目”に出てしまったのか。くしくも、場所前の稽古では得意の突き押し以外にもろ差しからの攻めを試す場面があった。

 貴景勝は「あくまでも自分のベースは突き押し。これからも突き押しでいくつもり」と前置きした上で「(幕内上位では)なかなか自分の思い通りにならない相撲も多い。そういうときに(突き押し以外の攻めを)少し出せれば。皆が何年もかけて完成させていくもの。たかが(稽古で)ちょっとやっただけでは、できるわけがない。根気良く積んでいきたい」と説明していた。

 現時点では痛みの原因は不明。ただ、とっさに出た“未完成”の攻めが体に過度な負担をかけた可能性も否めない。3月の春場所で大関昇進を決めた前後から、角界内には突き押し一辺倒の相撲に賛否両論があった(本紙既報)。貴景勝自身は突き押しを極める姿勢を貫きつつ、従来と全く同じスタイルでは限界があると感じていたことも確かなのだ。相撲の幅を広げる前向きな姿勢が今回の結果を招いたとしたら、皮肉としか言いようがない。