新大関は大丈夫なのか。大相撲夏場所(12日初日)を控えた6日、東京・両国国技館で横綱審議委員会による稽古総見が行われた。注目の新大関貴景勝(22=千賀ノ浦)は三役以上の力士による申し合いで3勝8敗。横綱大関相手には、わずか1勝と物足りない内容だった。稽古と本場所は別物とはいえ、不安を露呈した格好。本番で周囲の“低評価”を覆すことができるか、懸念が高まっている。

 新たな看板力士として存在感を示すことはできなかった。貴景勝は三役以上の力士による申し合いで3勝8敗と大きく負け越した。そのうちの2勝は関脇と小結が相手。横綱と大関にはまわしを取られて劣勢となる場面が目立ち、わずか1勝と寂しい内容に終わった。日本相撲協会の八角理事長(55=元横綱北勝海)は「押し相撲の力士は稽古場では強くない」と前置きした上で「もう少し前に持っていく相撲があっても良かった」と物足りなさを口にした。

 この日の総見を視察した相撲解説者の北の富士勝昭氏(77=元横綱)も「あれでは、勝てないんじゃないの」と不安視。貴景勝を筆頭に若い世代の活気ある稽古を期待していた同氏は「(見る側も)暇じゃないんだから。もう少しいい稽古が見たいわな。質、量ともに全くない。新しい年(令和)になって早々に言いたくないんだけど、期待していただけにガックリ。稽古が静かな感じ?“お通夜”だよね」と最後までボヤキ節が止まらなかった。

 貴景勝一人だけを責めているわけではないが、本来であれば新大関が最も目立たなければいけない存在であることは確か。この日の稽古を見る限り、一気に横綱に駆け上がると思わせるような期待感は高まってこないのも事実だ。

 先場所は22歳で大関昇進を果たす一方で、角界内には下降線の成績(13勝→11勝→10勝)を疑問視する声もあった。その意味でも、新大関で臨む今場所は、看板力士としての真価が問われることになる。

 総見後の貴景勝は「(稽古の勝敗は)全く気にならない。場所前の調子は何のあてにもならない。(新元号と新大関で迎える)区切りの場所でいい成績を残したい」と強気の言葉も口にしていたが…。場所本番で評価を一変させることができるのか。新大関に求められるのは“有言実行”だ。