新大関・貴景勝の親子鷹ストーリー 父・一哉さんと二人三脚

2019年03月27日 16時30分

貴景勝と父の一哉さん(左)、母の純子さん(右)

 日本相撲協会は27日午前、大阪府立体育会館で大相撲夏場所(5月12日初日、東京・両国国技館)の番付編成会議と臨時理事会を開き、関脇貴景勝(22=本名佐藤貴信、千賀ノ浦)の大関昇進を正式に決定。相撲協会からは出羽海理事(51=元幕内小城ノ花)と審判委員の西岩親方(42=元関脇若の里)が使者に立ち、大阪市内のホテルで貴景勝と師匠の千賀ノ浦親方(58=元小結隆三杉)に大関昇進を伝えた。角界のニューヒーローとしての期待も背負う平成生まれの新大関。育てた父とのアナザーストーリーとは――。

「大関貴景勝」が正式に誕生した。22歳7か月22日での大関昇進は初代貴ノ花の22歳7か月8日に次ぐ歴代9位の年少記録。初土俵から所要28場所は武蔵丸の27場所に次ぐ6位(幕下付け出しは除く)で、日本出身では最速となるスピード記録だ。身長175センチで、幕内では4番目に背が低い小兵力士。立ち合いで弾丸のようにぶつかり、一気に突き放す押し相撲で看板力士にのし上がった。

 その土台は小学校時代に築かれた。小学3年から相撲を始め、父の佐藤一哉さん(57)から“スパルタ指導”を受けた。複数の相撲クラブを掛け持ちし、高校へも出稽古した。朝昼夕の3部練習を課され、あまりのキツさに「倒れてしまいたい」と思うこともあった。

 早朝の5時に起床して片道2時間半かけて稽古に行ったこともある。出向いた先でも、自分より体格が大きな相手ばかり。貴景勝が「将来は関取になりたい」と口にすると「このチビ、何を言っているんだ」と鼻で笑われた。そんな時でも一哉さんは「今は誰も信じていないけど、必ず見返してやろうな」と言って、愛息を励まし続けた。新大関は「小さい時から自分の目標、夢というのを笑わなかった人が父親だった」と感謝の思いを口にした。

 そんな「親子鷹」の夢には、まだ続きがある。前師匠である元横綱貴乃花(46=花田光司氏)は2003年初場所を最後に引退。その後は和製横綱不在の時期が長く続いた。モンゴル出身の元横綱朝青龍(38)と横綱白鵬(34=宮城野)が土俵に君臨していた2009年、貴景勝は小学校の卒業文集に「日本人横綱になりたい。やっぱり日本の国技なので日本人に頑張ってもらいたい」との趣旨を記した。

 1月の初場所では元横綱稀勢の里(32=現荒磯親方)が現役を引退。再び和製横綱が不在の時期を迎えた。「平成」の元号で最後となる春場所で、入れ替わるように平成生まれの和製大関が誕生した。今の横綱、大関陣で、20代前半は貴景勝だけ。世代交代の旗手としての期待もかかる。

 師匠だった花田氏は26日、貴景勝の大関昇進について所属事務所の関係者を通じ「よくやった。でも、これからが相撲道の始まりである。健闘を祈る」とのコメントを発表。若武者も「もう一つ上(横綱)を目指してやっていきたい」。角界を背負う新ヒーローになれるか、今後も注目が集まる。

【貴景勝はこんな男】◆好物 一時期は温泉卵にハマり、一日で10個以上食べたことも。飲み物は炭酸水が好み。酒はチーズをつまみにワインを少々たしなむ程度。

 ◆リラックス法 就寝時に自室でアロマをたくこと。ラベンダーやオレンジの香りが好み。

 ◆音楽の趣味 サザンオールスターズ。春場所前の激励会では「栄光の男」を熱唱した。

 ◆家族 父・一哉さん、母・純子さん(52)。父は元空手家で、母は“美魔女”としても注目の存在。貴景勝は「父親が強い家庭。父が怒ると、母親はしれっといなくなるタイプ。でも(陰では)母親が食事を全部つくってくれたり、ありがたさを感じている」。

 ◆座右の銘1「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」。小学校時代に父から教えられた言葉。
一哉さんは「目的達成のためにどんな辛苦にも耐えろという意味。楽しみながら達成することはない」。この難読な熟語を小学生に教え、それを胸に刻み込んだ息子…。驚異的だ。

 ◆座右の銘2「一寸先は闇」。埼玉栄高相撲部・山田道紀監督(53)からの言葉。貴
景勝いわく「調子がいい時に、明日ケガをするかもしれない。いい時でも調子に乗らず、悪い時でも腐らずに」。

 ◆健康管理 栄養学や生理学を独学。一日で20種類以上のサプリメントを摂取する。その他にも「風呂に入ると(入浴後に)体を冷やすのにエネルギーを使うから、かえって疲れる」「手軽にビタミンCを取るには、イチゴがいい」などの理論を披露している。

 ☆たかけいしょう・みつのぶ 本名佐藤貴信。1996年8月5日生まれ。兵庫・芦屋市出身。兵庫・報徳学園中時代に中学横綱、埼玉栄高3年の2014年に世界ジュニア選手権無差別級優勝。同年秋場所に貴乃花部屋から初土俵。17年初場所新入幕。18年初場所新小結。同年10月に貴乃花親方(元横綱)の日本相撲協会退職により移籍し、九州場所で初優勝。今年初場所新関脇。殊勲賞3回、敢闘賞2回、技能賞2回。得意は突き、押し。175センチ、169キロ。