貴景勝 理想像は双葉山「男は黙って勝負」

2019年03月26日 16時30分

貴景勝は25日発行の本紙紙面をスマホ画面に表示させほほえんだ。後方は笑顔の千賀ノ浦親方

 目指す大関像とは――。大相撲春場所で大関昇進を決めた関脇貴景勝(22=千賀ノ浦)が25日、大阪・東大阪市内で会見した。「もう一つ上(横綱)を目指してやっていきたい」と早くも番付最高位へ意欲を示す一方で「昭和の寡黙な力士」を理想像に挙げた。勝っても負けても感情を表に出さず、男は黙って勝負する。大関として、古き時代の力士のイメージを体現していくつもりだ。

 貴景勝は会見で「本当にホッとした気持ち。いい経験をさせてもらったと思います」と大関昇進を決めた心境を語った。27日の正式決定を前に「力士だったら次の番付を目指すのが当たり前。そういう気持ちでいかないと大関は張れない。さらにもう一つ上(横綱)を目指してやっていきたい」と早くも番付の頂点へ向けて意気込んだ。

 大関になれば、角界を背負う看板力士の立場になる。関脇以下とは比較にならないほど注目度も増す。貴景勝には世間の目を意識した、力士の理想像があるという。「力士なので他のスポーツ選手とも違う。昔からの伝統をしっかりと重んじなければならない。昭和の力士、先輩方のマネをする部分はしっかりマネをしないと。言葉でいろんなことを言うよりも土俵で見せる力士になるべきだと思う」と力説した。

 大関になっても、これまでの考え方からブレることはない。昨年11月の九州場所で初優勝した直後には笑顔一つ見せず「力士だから笑う必要はない。うれしいけど、スポーツ選手じゃない」と言い切った。勝っても負けても感情を表に出さず、男は黙って勝負する――。今後も同じスタンスを貫いていく構え。それは昭和の力士のイメージとも重なっている。

 言い訳やグチを一切こぼさないことも、貴景勝のポリシーだ。昨年9月の秋場所後、先代師匠である元貴乃花親方の花田光司氏(46=元横綱)が日本相撲協会を退職したため、千賀ノ浦部屋へ移籍した。現師匠の千賀ノ浦親方(58=元小結隆三杉)に対しては、常々「大きな心で受け入れてくれたし(恩義に報いるために)成績を残したい」と感謝の言葉を口にしている。

 ただ、現状は必ずしも恵まれた環境ではなかった。地方場所でも常設の稽古土俵を備える部屋が多くある中、千賀ノ浦部屋は駐車場のアスファルトの上に土を盛り、簡易テントで囲っただけの仮設土俵を場所中の稽古場にしていた。昨年11月場所も同じような状況。それでも、貴景勝は「(どんな環境でも)勝つやつは勝つ。やれる環境で準備したらいい。(稽古は)畳一畳分あればできないことはない」と断言し、結果を残した。

 かの“角聖”双葉山は「われいまだ木鶏たりえず」などの名言と並び「勝負師は寡黙であれ」との言葉を残している。右目を失明するハンディを背負いながら、前人未到の69連勝などの大記録を樹立。失明の事実を現役時代は明かさなかった。

 昭和から平成、そして新たな時代へ。平成最後に誕生した新世代の大関が、大相撲の伝統を受け継いでいく。