大相撲の元幕内貴ノ岩(28)が10日、師匠だった千賀ノ浦親方(57=元小結隆三杉)とともに東京・両国国技館の日本相撲協会を訪れ、現役引退に伴う事務手続きを行った。冬巡業中の4日に福岡・行橋市内で付け人に暴行し、その責任を取る形で7日に相撲協会へ現役引退を届け出た。この日の手続きにより、元貴ノ岩には規定に従って退職金が支払われる。

 そうした中で、周囲には“貴ノ岩ショック”の余波が広がっている。今回の暴行問題を受けて、相撲協会は19日に関取全員を対象に「付け人に関する特別研修」を実施することを決定。全関取に付け人への接し方を改めて指導することになった。くしくも、19日には九州場所で初優勝した小結貴景勝(22)が母校の埼玉栄高で優勝パレードと報告会を行うことが予定されていたのだが…。この日、優勝イベントの延期が正式に決定。兄弟子が起こした不祥事により、弟弟子の晴れ舞台が流れる皮肉な事態となった。

 さらに騒動の影響は冬巡業にも及んでいる。巡業に参加する関取衆の間では、夜間外出の“自粛ムード”が漂っているという。角界関係者は「ほとんどの関取は食事を済ませたら、さっさと宿舎に戻っているそうだ」と明かした。

 日頃なじみのない土地を巡る地方巡業は、関取衆の心をリフレッシュさせる貴重な機会でもある。ただ、元貴ノ岩の一連の行動が角界全体に与えた影響は決して小さくない。幕内力士の一人は「下の者に対して、どう付き合えばいいのか。分からなくなった」と困惑の表情を浮かべた。

 いずれにせよ、古くから続く関取と付け人の関係が大きく揺らいでいることは確か。角界は大きな岐路に直面している。