大相撲九州場所9日目(19日、福岡国際センター)、小結貴景勝(22=千賀ノ浦)が大関栃ノ心(31=春日野)を一方的に押し倒して快勝。幕内で唯一の1敗を守り、勝ち越し一番乗りを果たした。「胸を借りる気持ちでいこうと思った。力まずにできている」と落ち着いた表情で話した。

 3横綱全員が休場する中、9日目を終えた時点で優勝争いの単独トップに立つ。さらに白星を積み重ねていけば三役で自身初の2桁勝利はもちろん、初優勝の可能性も十分にある。もちろん、実際に賜杯にたどり着くことは簡単ではない。現役時代に関脇で優勝している藤島親方(46=元大関武双山)は「優勝争いのトップで、これから未知の世界に入ってくる。千秋楽に近づくとともに体が動けるかが勝負。精神的なものが大きく作用する。今日までのような精神状態で相撲を取れるか」と指摘する。

 前頭筆頭で優勝経験がある錦戸親方(56=元関脇水戸泉)は「10日目を過ぎて終盤戦に入ってくると、また違った緊張感になる。(優勝を)“意識するな”と言われても意識してしまう。自分の時は、後援者の方や記者の方から優勝争いと言われて全く眠れなくなった」と当時を振り返った。

 ここから優勝が現実味を帯びるほど周囲の注目度も増してくるだけに、貴景勝にとっても体験したことがない重圧との闘いが待っている。貴景勝は10日目以降に向けて「ここから負けたら8勝7敗。15日間の戦い。10日目からだと思います。あと6日間、自分とどう向き合っていくか」と気持ちを引き締めた。

 小結の地位で優勝を果たせば、2000年5月場所の魁皇(現浅香山親方)以来18年ぶり。これまで通り、平常心で土俵に上がることができるのか。横綱不在で混戦模様となった「戦国場所」を制するカギとなりそうだ。