もう限界なのか――。大相撲九州場所5日目(15日、福岡国際センター)、横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)が途中休場した。今場所は自身初の一人横綱として臨んだが、初日から4連敗。初日の取組で右ヒザを痛めていた影響もあり、リタイアとなった。横綱に昇進した2017年の春場所以降、11場所で9度目の休場。来年1月の初場所に進退がかかることになるが、果たして和製横綱は逆境をはね返せるか。

 この日の午前、稀勢の里は福岡・大野城市の宿舎で「休場することになりました」と表明。「初日の相撲で(右ヒザを)痛めてしまって2日目以降は本来の相撲と程遠かった。(最後まで)務め上げたい気持ちはあったけど、体が続かなかった」と理由を説明した。

 師匠の田子ノ浦親方(42=元幕内隆の鶴)によると、稀勢の里は「このままでは終われない。チャンスをください」と現役続行の意欲を口にしたという。ただ、初場所で進退がかかるのは避けられない。芝田山広報部長(56=元横綱大乃国)も「これ(休場)を続けるわけにはいかない」と後がない状況を強調した。

 協会の諮問機関、横綱審議委員会の北村正任委員長(毎日新聞社名誉顧問)は「横綱の第一の条件である強さが満たされない状態が長期にわたっており、これを取り戻す気力と体力を持続できるか心配している」とのコメントを発表した。26日に定例会合を開く横審が、激励、注意、引退勧告の3つがある決議をするのかも注目される。

 いずれにしても、崖っ縁に立たされた和製横綱は、初場所で復活できるのだろうか。浅香山親方(46=元大関魁皇)は「体は動いていた。要は気の持ちようだ」とし、関脇転落から2度の大関復帰を果たした元栃東の玉ノ井親方(42)は「1年以上も連続で休んだ。1場所出場したくらいでは相撲勘がしっかり戻っていない」と指摘した。

 また、かねて周囲から“悪癖”と指摘される左を差しにいく単調な攻めも改善が必要だ。稀勢の里が逆転負けした4日目の栃煌山(31=春日野)との対戦。左四つで右を抱えながら出たが、左すくい投げに屈したことに、玉ノ井親方は「右でまわしを取っておけば危なげなく勝てた」という。

 八角理事長(55=元横綱北勝海)は「開き直って稽古するしかない。内容うんぬんより、とにかく番数をこなして自信を取り戻すしかない」と奮起を促したが…。和製横綱が正念場だ。