大相撲秋場所12日目(20日、東京・両国国技館)、横綱白鵬(33=宮城野)が大関栃ノ心(30=春日野)を下して幕内で唯一の全勝を守った。立ち合いから踏み込んで右を差すと、すくい投げで“瞬殺”。1差で追っていた横綱鶴竜(33=井筒)が2敗に後退し、5場所ぶり41回目の優勝へ向けて大きく前進した。取組後は「流れが良かったというか、反応が良かった」と自画自賛した。

 7月場所は右ヒザのケガで途中休場。夏巡業も一時離脱し、メスを入れることも真剣に考えた。左足首や右ヒジなどにも古傷を抱えており、体は満身創痍。百戦錬磨の大横綱が「体がガタガタ。(横綱として休場せずに)よく8年、9年も持ったよね」と弱音を漏らすこともあった。今場所は出場さえも危ぶまれたが、始まってみれば連勝街道を快走だ。

 日本相撲協会の八角理事長(55=元横綱北勝海)は「反応がいい。気持ちが高まってくれば、こういう相撲が取れる。優勝争いをしていれば体も動く。集中力がある」と目を見張った。13日目には稀勢の里(32=田子ノ浦)が横綱となってから初めての対戦。白鵬は「楽しみ。明日は特別だね」とこれまで数々の名勝負を繰り広げてきたライバルへの思いを口にした。

 場所が終われば大きな“ご褒美”も待っている。昨年7月場所に通算勝利数で魁皇の1047勝を抜き新記録を樹立(現在1089勝)。11月場所で優勝40回の大台に到達した。今年1月場所後には2つの大記録達成の祝賀会が1000人規模で予定されていたが、白鵬が1月場所を休場したため延期に。秋巡業の休養日にあたる10月15日に大阪市内で改めて開かれることになった。

 今場所での優勝41回に加え、幕内1000勝(あと2勝)も達成すれば喜びも倍増するに違いない。最高の美酒を味わうためにも、このまま千秋楽まで突っ走る。