【ノルディック複合NH】渡部暁斗を2大会連続銀メダルに導いた“異色の夫婦関係”

2018年02月15日 16時30分

2大会連続の銀メダルに歓喜する渡部暁

【韓国・平昌14日発】異色の夫婦関係が連続メダルを引き寄せた。ノルディックスキー複合個人ノーマルヒルで渡部暁斗(29=北野建設)が、前回ソチ五輪に続く2大会連続の銀メダルを獲得。前半飛躍(HS109メートル、K点98メートル)で3位につけ、後半距離(10キロ)では激しいデッドヒートの末、惜敗した。ストイックな渡部暁は結果を出すために、最愛の妻ともアスリート同士の関係を徹底してきた。20日の個人ラージヒルで今度こそ、悲願の金メダル奪取を目指す。

 分かっていても足が動かなかった。スパートするソチ五輪金メダルのエリック・フレンツェル(29=ドイツ)の背中を懸命に追いかけたが、届かない。「最後の上り(坂)の手前までは(金メダルを)取るつもりでいた。そこでフレンツェルとの差が開いて、そこで終わりだなと…」。渡部暁はさばさばした表情で敗戦を認めた。

 国際大会では「ミスターナンバー2」の称号で知られるほど銀メダルが多い。五輪前には金メダル奪取を宣言していただけに、うれしさと悔しさは半々だ。「取れるものは取った。もう1個、いい色のメダルを取る」と集中力を保ちながら、個人ラージヒルでの巻き返しを誓った。

 ソチ五輪後、フリースタイルスキー・ハーフパイプ代表の渡部由梨恵(29=白馬ク)と結婚。職がなかった渡部由が引っ越しの相談をすると、即座に同居を決めた。また遠征費を稼ぐため、ユニクロや農家での重労働で汗を流す渡部由を「意地を張るところじゃない」と諭し、金銭面の全額支援を申し出た。

 その結果、平昌では夫婦揃っての出場を果たしたが、そうした一方で夫婦においても自立した関係を求めた。「結婚と五輪はつながらない」が持論。同じアスリートとして応援することはあっても、競技の成績に刺激を与えるような存在とは別物と割り切っている。

 友人にも夫婦という雰囲気すら感じさせない。互いにストイックに結果を追求するアスリート同士という間柄をキープした。身近にいる父の修さん(62)も「いつも競技のこと中心に考えている。うちでも暁斗と(弟の)善斗と由梨恵と3選手がいるような感じ」と話すほどだ。

 周囲から見れば不思議な関係でも、渡部暁にとってはそれが理想的だった。「結婚していようがしてなかろうが、ボクが向かうところは変わらないし、それに対するモチベーションだったりとかっていうことは何も変わらない」。夫婦関係さえも妥協せず、1日24時間をアスリートとして過ごしてきたからこそ、2大会連続で銀メダルをつかめたのだ。

 もちろん、まだ満足はしていない。最大目標はあくまで金メダルだ。所属の荻原健司GM(48)は、渡部暁の偉業をたたえる一方で、金メダル獲得にはジャンプで20秒のリードを奪うことを条件とした。「エリックもうまく五輪に調整してきた。ただジャンプの力は暁斗にある。ラージ(ヒル)は本当に可能性はある。2つ目のメダル獲得は間違いない」と力を込めた。

 複合団体で2大会連続五輪金メダルの荻原GMからは、すでに「日本のキング・オブ・スキー」の称号を譲渡された。渡部暁は“真のキング”を目指すラージヒルへ向け「気を引き締めていいジャンプして、さらに離して距離に入りたい。金メダルを取らないと前に進めない」と不退転の覚悟を示した。

 ☆わたべ・あきと 1988年5月26日生まれ。長野県出身。長野・白馬高、早大出。小学4年でジャンプを始め、中学1年から複合に取り組んだ。2006年トリノから五輪4大会連続出場。14年ソチ五輪で個人ノーマルヒル銀メダル。世界選手権は09年に団体で金、17年に個人ラージヒルで銀、弟の渡部善斗と組んだ団体スプリントで銅。173センチ、60キロ。