“ブライトンの歓喜”から無念の敗退――。ラグビーW杯イングランド大会1次リーグB組・スコットランドVSサモア(10日、ニューカッスル)はスコットランドが激戦の末36―33で制し、勝ち点14で各組上位2チームによる決勝トーナメント進出を決めた。すでに同16の南アフリカがB組1位を決めており、日本は11日(日本時間12日)の米国戦に勝っても勝ち点は最大13にとどまるため、トーナメント進出の可能性が消滅。大会初戦、ブライトンで南アを破る大金星で世界を驚かせた日本だが、8強入りに3つのカベが立ちはだかった格好だ。

 この日の出来なら日本も勝てなかっただろうと思わせるぐらい、サモアは激しい当たりとボールを広範囲に散らす展開で攻めまくった。スコットランドから前半3トライを奪い、3点リードで折り返し。ボーナス点を得る勝利の場合、2019年日本大会の出場権を得る3位の可能性が残されており、試合前の国歌斉唱では目を潤ませる選手も数人いるほど気合をにじませた。


 対するスコットランドも日本戦と同様の厳しいタックルで試合の崩壊を防ぎ、大黒柱のSHレイドローが着実にゴールを決めて食いつく。PG2本で後半8分に逆転すると、34分にレイドローが自らトライ、ゴールで10点差に突き放す。サモアは残り2分にトライを返したものの、奇跡の同点・逆転はならず。前半の終盤、トライの場面で味方選手の反則がありノートライとされ、さらにゴール前のPKでボールをつないだが得点できず。ここでゴールを狙い、トライ場面の反則もなければ、計算上は勝っている流れだった。


 日本ラグビー協会・運営スタッフのツイッターは「最後まで勝利に向けて、闘ってくれてありがとう」とサモアに感謝。エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチは「やるべきことは変わらない。米国戦に勝利し、W杯で初めて3勝しながらも準々決勝に進出できなかったチームになる」と同協会を通じてコメントした。


 8強入りを逃しても、日本選手の活躍は色あせないというのがファンらの意見の大勢。一方で「3勝しながらも」決勝トーナメントに進めなかったとなれば、何が原因だったのか。


 ネット上で是非の議論も呼んでいるボーナス点では、現時点でサモアまでのB組上位4チームで1点も取れなかったのは日本だけ。日本に敗れた南アは4トライ以上、7点差以内の負けによる2点を確保し、引き分けと同じ勝ち点を得ていた。1勝のサモアも勝利による勝ち点4にボーナス点2を上乗せしている。


 マッチポイント制と呼ばれるこのシステム、W杯では2003年に始まり、日本国内でもトップリーグや大学選手権で導入。目新しいものではなく、今回はそれを生かせなかったことも若干、8強争いに影響した。


 スコットランド戦に中3日で臨んだ日程を日本代表は敗戦と結びつけていないが、その影響は各方面で指摘される。これも全チーム共通でないため不公平ではあるが、日本は過去にも経験している。それを克服することができなかったという見方もできる。


 そして、米国に勝った場合、日本を唯一負かしたことになるスコットランドには特別なモチベーションも加わっていた。サッカーの代表チームが8日、来年の欧州選手権予選でポーランドと引き分けて敗退が決定。地元メディアはラグビーがその分も頑張ると報じていた。


 今大会は英国での開催ながら、かつてスコットランドを併合したイングランドが主会場。ウェールズのカーディフ・ミレニアムスタジアムが会場とされたのに対し、スコットランドがホームとするエディンバラ・マレーフィールドはなぜか採用されず、“スコットランド外し”も一部で疑問を呼んでいた。


 そのイングランドが1次リーグ敗退とあって、それを超えようとなおさらスコットランドは燃えていたに違いない。


 ボーナス点と不利な日程、燃えるスコットランド。この3つが“死のB組”を左右する要因となった。