“恐怖の学園”の実態が明らかになった。元ラグビー日本代表で、学校法人「芦屋学園」理事長の大八木淳史氏(53)が脅迫の疑いで刑事告訴された。兵庫県警芦屋署に刑事告訴したのは同学園の中高一貫校の元教頭で、現図書館事務長の稲田信行氏(64)。大八木氏は「事実無根」とし、同日名誉毀損で稲田氏を逆告訴したが、同学園の教員は本紙に怖すぎる理事長室の舞台裏を明かした。

 理事長と元教頭による“スクール・ウォーズ”が勃発した。稲田元教頭が提出した告訴状によると、中高一貫校「芦屋学園中学・高校」は、大八木氏が校長を兼務している。

 同校は2012年から、生徒を大八木氏が理事を務める外部の学習塾に通わせ、委託料として年間約3000万円を支払っていた。当時、在職中だった稲田氏は14年5月に、大八木氏が元教頭や副校長らに伝えず、そうした支出をしていると指摘。すると、大八木氏は「理事長には絶対の権力がある。ちょっとでも不利益を与えたら、とんでもないことになる」と発言したとされる。

 大八木氏の暴言はこれだけではないという。

 告訴状などによると、「オレは有限会社と株式会社を持ってる、個人で。今度、こんなチンピラなやつが、こいつ(稲田氏)のところへ行って、何しようが分かりませんで。刺すかどうか分かりません。こいつが言いよったんやでってなったら」と机を叩きながら脅し文句を言ったり、「理事長には絶対の権力がある。今、大八木ですわ。ここに刃向かうということを理解しな」と権力を誇示したこともあったという。

 講演会のほか、テレビでコメンテーターをすることも多い大八木氏だが、学園ではダークな一面を見せることもあった。教員の一人はこう話す。

「職員の9割は稲田先生の味方。残りもほとんどは、どちらでもない中立派」と明かし、学園に大八木派はごく少数しかいないと指摘。稲田派が9割にまでなったのも、大八木氏の理事長室での言動が原因だという。

「出入り業者の中には、その筋の人としか思えない人もいる。あまりに不自然なお金のルートになっていたから、直接その業者に質問状を送ったんです。そしたら、質問に答えるという理由で理事長室に集まった。そうすると理事長室の裏で、その出入り業者が大八木氏を大声で怒るんです。『なんでオレがこんなことされなアカンねん』と。それで出てくる大八木氏が、また『お前らのせいで、なんで怒られなアカンのや』と激怒。そんなことを繰り返してました」と振り返った。なんと、あえて怒られることで恐怖を増幅させていたというのだ。

 大八木氏は稲田氏に対して「ブラックなところなら、例えば○○(個人名)のところとか。そんな訳分からんやついっぱいおるんやから」と黒い交際をチラつかせることもあったという。

 稲田氏は証拠となる音声データも提出したが、大八木氏は「事実無根」と説明。同日、名誉毀損容疑で稲田氏に対する告訴状を芦屋署に提出し「ご迷惑をおかけしたことをおわびします」と話した。

 稲田氏は今年3月末に教頭を解任され、同法人が運営する大学・短大の図書館の事務長に異動。教頭を解任された理由は説明されなかったという。

 稲田氏は大八木氏について「スポーツ関係出身で、ああいう先生。そういう(スポーツの)世界で生きてこられたので強い言葉が普通だと思うんですが、世の中にはいろんな人がおります。言葉に関しては、ぜひ配慮していただきたい。スポーツで通用する言葉がどこでも通用するんじゃないということだけは、ご理解いただきたい」と、刑事告訴の目的は学校の乗っ取りではなく、あくまで現場の改善が目的と説明した。

 前出の教員も大八木氏のことを「学校には週に3回ぐらいしか来ないし、全校集会では行うあいさつも用意しないから内容がない。僕らは教育者として認めていない」とバッサリ。

 稲田氏は3月の異動について、地位保全を求め民事で大八木氏を訴えてもいる。芦屋署は刑事告訴について「受理するか慎重に判断する」としており、民事・刑事両面で“スクール・ウォーズ”がどう判断されるのか、見ものだ。