【東京パラリンピック】車いすラグビー銅に導いた主将・池透暢は絶望の淵から世界へ「一つずつ目の前のことをクリア」

2021年08月29日 17時41分

銅メダルを獲得を喜ぶ島川と池(ロイター)
銅メダルを獲得を喜ぶ島川と池(ロイター)

 東京パラリンピック・車いすラグビー(29日、国立代々木競技場)の3位決定戦でオーストラリアを60―52で下し、2大会連続で銅メダルを獲得した日本をけん引したのは、主将・池透暢(41=日興アセットマネジメント)だった。

 19歳の時に交通事故に遭って左足を切断。さらに、全身の7割以上にやけどを負い、左手にもまひが残った。池自身は一命を取り留めた一方で、同乗した友人3人が亡くなった。事故当時は「死にたい」と思うこともあったが「友人たちのために」と一念発起。前を向いて生きることを誓った。

 リハビリは壮絶なものだったが、必死に乗り越えた。入院中に車いすバスケットボールを始め、2012年に車いすラグビーへ転向。16年リオ大会では、史上初の銅メダルを獲得に貢献すると、18年世界選手権で優勝。東京大会は「金メダル」を目標に掲げ、主将としてチームをまとめ上げてきた。

 なぜ、絶望の淵から世界を目指せるようになったのか。「大きな壁を乗り越えたように見えるが、一つずつ目の前のことをクリアしていったら、自然と大きな目標になっただけ」。遠い未来は見えなかったが、着実に歩みを進めることで道を切り開いてきた。

 特別な思いを胸に挑んだ東京大会。予選リーグは1位通過したが、準決勝(28日)で英国に49―55で敗戦。「金メダルだけを見てきた」と声を詰まらせながらも「胸を張れる試合をしたい」と気持ちを切り替え、3位決定戦の舞台に立った。

 銅メダルをかけた一戦では、チーム最初の得点となるトライを決めると、エース・池崎大輔(三菱商事)との「イケイケコンビ」を軸に、前半から積極的な攻撃を披露。世界ランキング1位の強豪相手に、持てる力を十二分に発揮した。

 試合終了の瞬間、島川慎一(バークレイズ証券)と抱き合って満面の笑みを浮かべた池。「チーム全員で昨日の敗戦から立ち上がったことが今日の勝因。何とか開催してくれて、いろんな人が尽力してくれた大会でメダルを持って帰ることができてうれしい。本当に何にもなかったらゾッとする(笑い)。本当に感謝の気持ちでいっぱい」と声を弾ませた。

 目標には届かなかったが、最高に輝くメダルを天国の友人たちへプレゼントした。

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