【ラグビー】薬物逮捕の“連帯責任”でTL3月全試合中止 イメージ悪化防ぐ「全選手検査案」浮上

2020年03月10日 14時00分

太田チェアマンは神妙な面持ちで会見した

 プロ野球の開幕延期やサッカーJリーグの中断期間延長など新型コロナウイルスの影響でスポーツ界が大混乱となる中、ラグビーのトップリーグ(TL)はまた別の理由で危機的状況を迎えた。日野の所属選手が違法薬物使用容疑で4日に逮捕されたことを受け、TLは14日からの3節分を中止にすると発表。昨年6月にも同容疑での逮捕者が出ており、事実上の“連帯責任”を科した格好だ。イメージ急落は避けられず、これに続く逮捕者が出るようなら悪夢のシナリオが動き始める。

 初のベスト8入りを果たした昨秋のW杯日本大会の盛り上がりを引き継ぎ、1月12日に開幕したTLでも観客動員は絶好調だったラグビー界だが、それも過去のものとなりつつある。

 すでに新型コロナウイルス感染拡大の影響で先週末までの2節分が延期されたが、その期間中に日野所属のジョエル・エバーソン容疑者(30)がコカインを使用したとして麻薬取締法違反の疑いで逮捕された。これを受け、14日からの3節分24試合が中止となった。代替開催も行われない。9日の会見でTLの太田治チェアマン(54)は「TL、日本ラグビーの存在を揺るがす大きな問題であり、非常事態。同一年度内に複数のチームから薬物の逮捕者が出たことを非常に重く受け止めた」と説明。また今回の決定は「コロナウイルス感染拡大とは切り離して考えている」と強調した。

 昨年6月にトヨタ自動車所属選手が違法薬物で逮捕されてから、各チームに法令順守に関する責任者を置くなど再発防止策を進めてきた中で起きた事件。このため一選手の逮捕を所属チームの活動自粛にとどめず、リーグの一定期間中止にまで踏み込んだ。今後は太田チェアマンが「『ラグビー選手=薬物』みたいなイメージを払拭して再開したい」と語るように、再発防止をより徹底していく。再度のチームミーティングや個別ヒアリングを実施していくほか、TL選手全員に毛髪検査を含めた薬物検査も念頭に置いており、各チームには「全選手が違法薬物に無関係」と証明する文書の提出を求める方針だ。

 太田チェアマンは「証明が遅れれば(再開が)延びる可能性もある」と明言したが、さらなる逮捕者が出た場合は再開延期どころではない。「そこまでして出たとなったら(再発防止策など)再考しないといけない…」(同チェアマン)という一方で、あるTL関係者は「今回の決定を踏まえると、今季の再開は難しいのではないか」と指摘した。

 ラグビー界ではTLチーム所属選手の逮捕者だけではなく、今年1月には日大ラグビー部の部員が大麻取締法違反(所持)で逮捕された。過去にも薬物関連で逮捕者が出ており、現段階では逮捕者以外の全TL選手がシロという証拠はどこにもない。

 最悪の事態として今季TLが中止となった場合には、日本のトップカテゴリーで行うリーグ存続にも関わってくる。2021年秋にはTLに代わる新リーグがスタートする予定だが、前出の関係者は「ラグビー界が薬物イメージを払拭できない状況になったら、新リーグ参入を再考するチームが出てくるかもしれない」。既存のTLチームの中にはラグビーから撤退、または部の縮小を検討して新リーグ参加を見送る方針を示すところもあり、ラグビーのイメージ低下を理由に、そうしたチームが増える可能性もある。

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 今季のTLはW杯効果で開幕から各会場に多くの観客が詰めかけた。開幕戦の東芝―サントリー戦(秩父宮)が2万1564人、神戸製鋼―キヤノン戦は2万3004人(神戸ユニバ)と、ともに2万人超えを果たすなど、すでに全15節中6節を消化して観客動員は42万人を突破。開幕前に、W杯の“追い風”も考慮して設定した過去最高60万人の観客動員目標は、早期に達成するとみられていた。

 ところが、新型コロナウイルス感染拡大で2節分が延期され、今回さらに3節分の試合中止が決定。しかも逮捕者を出した日野は今季の試合を今後行わない。再開の見通しも不透明となっているだけに、目標に届かない可能性も出てきた。