【ラグビー元日本代表・有賀剛のGO’s EYE】アジア初開催となったラグビーW杯日本大会は決勝(2日)で南アフリカがイングランドに32―12で勝利して3度目の優勝を飾り、幕を閉じた。今大会は、日本代表が1次リーグ4連勝で初のベスト8を成し遂げて大躍進。そんな“桜の戦士”たちの戦いを元日本代表の有賀剛氏(36=サントリーBKコーチ)が振り返るとともに、2023年W杯フランス大会に向けて4強入りのポイントを指摘した。

 日本は目標としていたベスト8入りを果たしてくれた。しかもティア1(強豪10チームの総称)チームのアイルランドとスコットランドを破って1次リーグ4戦全勝。選手たちは確固たる自信を持って臨んだのかもしれないが、周りが期待する以上の素晴らしい成績を残してくれた。

 選手に聞くと、コーチ陣が提示した戦術を遂行できたことが決勝トーナメントに進出できた一つの要因だったという。そのために長い期間の合宿で厳しいトレーニングを続けて、選手たちがそれを可能にするだけのスキルを身に付けたということだろう。(2015年W杯で日本代表を指揮した)エディー(ジョーンズ=59、イングランド代表HC)さんのときもそうだったが、徹底した準備が結果となって表れたと言える。

 あえて1人だけ名前を挙げるならば、SH流(大=27、サントリー)の存在が大きかったと見ている。サントリーでも主将を務めているが、個人としてやるべきことを遂行できる力があり、リーダーとしてもチームにきちんと伝えられる言葉の選び方もうまい。仲間であってもあえて厳しいことが言えるのも彼の長所。年齢的にも今後の日本代表を引っ張っていく中心選手の1人なので、この経験をフランスW杯につなげてもらいたい。

 4年後はベスト4入りの期待もかかる。今回は決勝トーナメント進出が目標だったので4試合を勝ち抜く準備はできていた一方で、誰も経験していない5試合目(準々決勝)のメンタリティーの準備は難しかったのかもしれない。ただ一気に2つも3つもステップを上がれるものではない。1次リーグで3勝した前回大会があって、今回のベスト8が実現したように、次はこの経験が生きてくる。

 次回大会は、W杯5試合目を経験した流やWTB松島(幸太朗=26、サントリー)、ナンバー8姫野(和樹=25、トヨタ自動車)が中心になってくる。ラグビー界の未来のためにも新たなリーダーをつくっていく必要があるので、彼らの中の誰かがリーチ(マイケル=31、東芝)に代わる新しい主将を担うことになるだろう。リーチは4年後を視野に入れているようだし、これからは豊富な経験を生かして新キャプテンを支えてくれるはずだ。

 個人的にはうち(サントリー)でプレーしているCTB梶村祐介(24)を新戦力として期待する。最後の最後でW杯メンバー入りはならなかったが、W杯で活躍したCTB中村(亮土=28、サントリー)のように体が強く、スキルもある。落選した悔しさを糧に4年後の大会で日の丸を背負ってもらいたいし、中村とCTBコンビを組んでくれたらうれしい。もちろん、ほかの選手の切磋琢磨が、代表強化につながるのは言うまでもない。

 あとは、日本が参加を目指している南半球4か国対抗(南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリア、アルゼンチン)への参戦など、継続的に強豪チームと対戦できる環境づくりも重要になるだろう。