いよいよ決戦だ。ラグビーW杯日本大会で悲願の8強入りを果たした世界ランキング7位の日本代表は準々決勝(20日、味スタ)で、過去2度のW杯制覇を誇る同5位の強豪、南アフリカとの大一番に臨む。大会開幕直前(9月6日)に強化試合で対戦した際には7―41と大敗を喫しているが、4強入りの可能性はあるのだろうか。元日本代表の有賀剛氏(35=サントリーBKコーチ)が、抑えるべき南アの「要注意人物」を指名するとともに、勝利へのポイントを挙げた。

【ラグビー元日本代表・有賀剛のGO’s EYE】準々決勝で対戦する南アフリカは、世界トップクラスのフィジカルを持つ巨漢たちを擁する強敵。エベン・エツベス(27)ら身長2メートル超が揃うロックや、フッカーのマルコム・マークス(25)ら強力なFW陣がその象徴だ。そんな相手のスクラムやラインアウトに対抗するために、トンプソン・ルーク(38=近鉄)らロック陣の頑張りに期待したい。ラインアウトでは彼らがキーになるし、スクラムではロックの押しが効くからだ。

 FWだけでなく、BK陣も注意が必要。中でもSHファフ・デクラーク(28)を要注意人物に挙げたい。身長172センチと小柄にもかかわらずフィジカルにプレーでき、判断力も抜群。9月に対戦したときも裏のスペースに正確なキックで蹴り込まれてピンチを招いたように、キック力にも定評がある。ボールを持ったらキック、ラン、パスのオプションを使い分け、どれを繰り出してくるかわからないのも厄介だ。

 まずはデクラークにプレッシャーをかけて、好きにプレーをさせないようにしたい。SHはパス出しを担うだけに、少しでも彼のリズムを崩すことができれば、チーム全体の歯車を狂わせることができるだろう。また、彼が機を見て蹴るコンテストキック(敵味方で競り合えるようなキック)にも注意。9月の対戦ではこの処理が課題として残っていたので、バックスリー(WTB2人とFB)はしっかりケアをしてほしい。

 戦い方に関して敵陣ではボールキープが大事になってくるが、自陣でのキックの使い方がポイントになると思う。ディフェンスがものすごく強いので、キープし続けるとかえって危険。裏へのスペースがあればキックを使ったり、コンテストキックで再獲得を狙ってもいい。キックを使うことにより体の大きい選手を後退させることで、前に出てこないようにする効果も期待できる。

 参考になるのが、1次リーグ(9月21日)で南アと対戦したニュージーランドだ。フィジカルにくる強力なDFを避けるためにキックを有効に使っていたし、外へのスペースに蹴り込んで相手を崩してトライにつなげていたシーンもあった(23―13でニュージーランドの勝利)。世界ランク1位のニュージーランドだからできたという見方もあるかもしれないが、日本のアタックも世界に通用している。南ア攻略のヒントになると思う。

 そうしたゲームプランで、できるだけ自陣22メートル内に相手を入れないようにしたい。レフェリーの傾向を見ていると、特にそのエリアのオフサイドに厳しいように思う。そこでアドバンテージを取られたら一気にピンチにつながってしまうので、より注意が必要だ。