ピッチ外でも歴史をつくれるか。初のW杯ベスト8を達成したラグビー日本代表は、準々決勝の南アフリカ戦(20日、味の素スタジアム)に臨む。前回大会で勝利した優勝候補との再激突が注目される一方、日本列島を駆け巡る“ラグビー語録”にも関心が高まっており、年末発表の「ユーキャン新語・流行語大賞」の受賞も期待される。日本チームが掲げる「ONE TEAM」が最有力視されている中、まさかの「笑わない男」が急浮上。日本ラグビー界で初の快挙を狙う。

 日本代表が8強入りを果たし、大きな盛り上がりを見せる中、ラグビー関連のワードが「新語・流行語大賞」で選ばれるかへの期待が高まっている。中でも日本ラグビーを象徴する言葉としてチームスローガンの「ONE TEAM」が有力候補だろう。

 このワードに込められた意味をCTB中村亮土(28=サントリー)は「これまで一緒に合宿をした仲間やそれ以前の選手も含めて8強進出を勝ち取ったということ。全員の力が取った勝利」と語った上で「いろんな方に僕らのいい雰囲気やラグビーの良さが広まっているのは、これまでの積み重ねが報われているのかな」と目を細めた。

 ただ「新語・流行語大賞」にノミネートされそうな言葉はほかにもある。ラグビーの根幹にある「ノーサイド」も候補の一つ。今大会の人気の“火付け役”にもなったドラマ「ノーサイド・ゲーム」(TBS系)のタイトルでなじみのある読者も多いはずだ。

 さらに、トライを量産して勝利に貢献している快足WTBの2人、福岡堅樹(27=パナソニック)、松島幸太朗(26=サントリー)を表した「ダブルフェラーリ」。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC=49)が命名した「フェラーリ」に由来する言葉だ。またナンバー8の姫野和樹(25=トヨタ)の得意技、相手からボールを奪取する「ジャッカル」もテレビ中継で連呼されており、候補となるだろう。

 そんな中“大穴”としてひそかに注目されているのはスコットランド戦(13日)で逆転トライを決めたプロップの稲垣啓太(29=パナソニック)のニックネームでもある「笑わない男」だ。関係者は、テレビ番組などで取り上げられる機会が多く、広い世代に浸透しているとし「言葉として面白いし、彼の武骨なキャラが確立すれば、もっと伸びるだろうね」と期待した。

 特に「この『笑わない男』っていうのは、体で表すパターンの流行語。スコットランドに勝った後の集合写真で彼が笑っていなかったのはインパクトが強かった。前回のラグビーW杯の『五郎丸(ポーズ)』(※独特のルーティンでキックをしたFB五郎丸歩)もだけど、子供がマネできる点が大きいんだよ。世間がマネすればするほど、言葉も流行するからね」

 今年のスポーツ界では女子ゴルフの「全英女子オープン」を制した渋野日向子(20=RSK山陽放送)の「スマイルシンデレラ」が大賞の最有力とされる中、武骨な稲垣との対比も期待される。「ユーキャン新語・流行語大賞」事務局は15日、本紙の取材に「まだどんな言葉がピックアップされるかは分かりませんね」としたが、スポーツ界からは、どんな言葉が選ばれるのか。11月6日にノミネート、12月2日に年間大賞とトップテンが発表される予定だ。

【15年「五郎丸」トップ10選出】「ユーキャン新語・流行語大賞」(自由国民社)では世相を反映したり、大きな話題になった新語、流行語を選出し、関係した人物や団体を表彰している。

 これまでスポーツ界からは、五輪などのビッグイベントがあった年に選出されるケースが多く、2004年アテネ五輪で競泳男子・北島康介が100メートル平泳ぎで金メダルを獲得した際に語った「チョー気持ちいい」などの「名言」をはじめ、06年トリノ五輪のフィギュア女子で金メダルの荒川静香が披露した技の「イナバウアー」など、印象的な言葉が大賞に輝いている。

 また、サッカー日韓W杯が開催された02年には「ベッカム様」、15年のラグビーW杯からは「五郎丸(ポーズ)」がトップテンに選出された。また、18年は平昌五輪で銅メダルを獲得したカーリング女子が試合中に発した「そだねー」が大賞を受賞しており、19年はラグビー関連のワードが大賞になる可能性もありそうだ。