神のみぞ知るということか。ラグビーW杯日本大会で1次リーグ3連勝中の日本代表は8日、最終戦のスコットランド戦(13日、日産)に向けて本格的な練習を再開した。8強入りをかけた一戦へフィフティーンは気合十分だが、試合当日は今年最強の大型台風19号が関東に上陸する恐れがあり、中止になる可能性が浮上。大会組織委員会はリスク管理を徹底している一方、“二次被害”を心配する声も出ており、思わぬ「台風騒動」が起きている。

 チームはこの日、ラインアウトからの連係を確認するなど、最終決戦に向けて調整。ロックのビンピー・ファンデルバルト(30=NTTドコモ)は「(次の)1勝で新たな歴史がつくれるので、そこだけにこだわっている」と語った。

 日本代表は開幕3連勝と白星を積み重ね、初の8強入りまであと一歩。日本中を熱狂の渦で包んでいるが、一方で想定外の“アクシデント”に見舞われるかもしれない。大型で猛烈な勢力に発達した台風19号が日本列島めがけて進行中で今週末に関東に上陸する恐れがあり、12、13日の試合が影響を受ける可能性があるのだ。

 1次リーグは中止になった場合、引き分け扱いになり、両チームに勝ち点2が与えられる。そのためスコットランドが仮に9日のロシア戦(静岡)で勝利を収め、4トライ以上のボーナスポイントを含めた同5を手にしても、13日の試合が中止となれば日本が同16となって上回り、8強入りが決定。同じく台風19号の影響を受ける可能性がある12日のアイルランド―サモア戦(博多)が中止になっても、アイルランドは同13で現在同14の日本を上回ることができず、日本が自動的に1次リーグを突破する。

 日本にとっては何ともすっきりしない“恵みの雨”となるが、運営面はどうなのか。日本―スコットランド戦の試合会場となる日産スタジアムは7万人が収容可能で、チケットはほぼ完売状態。それが中止となれば払い戻しで多額の損失が出そうだが、大会組織委員会は保険をかけるなど対策はばっちり。さらに、観戦中にスタジアムで購入するであろう飲食物も、組織委の直接的な収入にはならないため問題なしという。

 とはいえ、過去8大会で中止になった試合はなく、気になるのは初めての日本開催で“前例”をつくってしまうこと。組織委関係者は「こうした台風が来ることも想定して、ありとあらゆるシミュレーションを重ねてきました。ワールドラグビー(国際統括団体)とも議論を重ねてきましたので、今後のリスクというのはないと考えています」と話すが、別の関係者からは思わぬ“二次被害”を心配する声も出ている。

「今回(台風)のことで上層部は慌てているようだ。当初は言葉の問題もあったようだけど、日本の『おもてなし』に海外の方々は満足度を高めていると聞いている。それなのに、試合ができないなんてことになったら、何もかもひっくり返ってしまう。特に海外の人に帰宅困難者が出たらどうなるんでしょうね…」

 9月の台風15号では首都圏でも甚大な被害が出たことは記憶に新しい。交通機関も大混乱となり、駅は人であふれ返った。今回も同じことが起きかねないだけに、台風に慣れていない海外チームや観光客らの安全確保が重要になってくる。

 ただ、WTBレメキ・ロマノラバ(30=ホンダ)が「雨で試合がないのは男らしくないので勝負したい」とコメントした通り、選手は試合開催を望んでいる。組織委は代替会場開催の可能性も含めて模索しているが、代替開催には調整期間が短く難航必至。安全面が最優先される中で、難しい選択を迫られそうだ。