【ラグビーW杯】恩師が明かす素顔 不動のSO・田村は「裏番」

2019年10月02日 16時30分

国学院栃木高の吉岡監督

 日本のキーマンは裏番長? ラグビーW杯1次リーグA組の日本代表は第3戦サモア戦(5日、豊田)に向けて調整を進めている。厳しい戦いが続く中、8強入りのカギを握るのは、精度の高いキックや優れた状況判断で勝利に貢献するSO田村優(30=キヤノン)だ。大一番を前に母校・国学院栃木高の吉岡肇監督(58)が司令塔の素顔を明かしつつ、エールを送った。

 快進撃を支える日本の司令塔、SO田村の原点は国学院栃木高にある。父・誠さん(57)が高校時代に同期だった吉岡監督に預けたところからラグビー人生がスタートした。

 吉岡監督 初心者で何も知らないからスポンジが水を吸うように吸収していったわけよ。でも運動能力は高かったね。感覚の鋭さ、スタートの速さ、読み、フェイントとか教わるところではない部分で優れているのはたくさんあった。センスがあったんだね。

「努力」という泥くさい言葉が似合うタイプではないが、居残りでプレースキックを磨いた。当時の積み重ねが精度の高いキックを生み出し、代表でも存分に生かされているのだ。その母校は現在19年連続で全国高校ラグビーフットボール大会(通称花園)に出場している。ただ、田村の代は強豪ではなかったという。

 吉岡監督 戦力的には最低だったね。(歴代チームで)1、2を争う弱さだった。3年でまともに戦力として計算できたのは3人しか記憶にない(苦笑い)。田村を除くと2人だね。他に2年だったり、10人いた3年で仕方なく出ていた選手もいたけど、チャンスメークとかできるレベルで言えば3人程度。非常に厳しい世代だった。

 それでも「記録を途絶えさせるわけにはいかない」と田村はチームの中心となって奮起。7年連続(当時)となる全国大会の切符をつかみ、指揮官を男泣きさせた。

 吉岡監督 花園(の栃木県)予選準決勝は作新学院戦でトンガから来た2人の留学生がいて非常に怖かったけど、田村ら3人の3年が渡り合った。決勝にも勝ってね。負けていれば(一からのスタートで今が)12連覇だったけど。県内最後の2試合は見事で、すべての恩返しをして余りあるくらいだったね。

 チームをけん引した田村だが、主将タイプではなかった。ただ、ラグビー部でもクラスでも存在感は際立っており、常に中心人物として君臨。周囲の人間を引き寄せる“魅力”を持っていた。

 吉岡監督 王道の主役ではないね。番長ではなく、裏番長みたいな(笑い)。性格的に優等生、クラス委員、リーダーとかそういうものが煙たいタイプというか…肌に合わないんじゃないかね。でも実質、生徒たちの中心だった。

 2人の師弟関係は連絡を取り合うだけではない。吉岡監督はW杯開幕前最後のテストマッチとなった南アフリカ戦を現地観戦するなど、今でも愛弟子を温かく見守っている。最後に、主将リーチ・マイケル(30=東芝)が開幕前に今大会のキーマンに指名したほど、絶大な信頼を置く“裏番長”にエールを送った。

 吉岡監督 気をつけることはケガだね。途中でリタイアすることなく活躍してほしい。高校のときのようにW杯でもいい夢を見せてくれたらいいよね。