8強入りに“秘策”あり。20日開幕のラグビーW杯に臨む世界ランキング10位の日本代表は17日、1次リーグA組初戦のロシア戦(20日、味スタ)に向けて都内で練習を実施した。大会前最後の強化試合となった世界4位の強豪南アフリカ戦(6日)ではホームで惨敗。本番へ向けて不安を露呈したが、選手たちにはショックの色がほとんどない。その裏にある事情とは――。

 いよいよ緊張感が高まってきた。本番が目前に迫り、選手たちも決戦に向けて集中モード。南ア戦で完敗したショックを引きずる雰囲気はみじんもない。プロップの中島イシレリ(30=神戸製鋼)は「早く試合がしたい。南ア戦のスクラムは自信になった」と開幕を待ちきれない様子だ。

 日本はなすすべなく惨敗したものの、世界最強のフィジカルを誇る南アに対し、4年間にわたって重点的に強化してきたスクラムで互角に渡り合った。これはチームにとって大きな収穫で、選手たちも確かな自信を得たためショックを引きずっていない、というのが“表向き”の理由。一方で声を大にして言えない“裏”の理由も存在しているのだ。

 あるトップリーグ関係者はこう明かす。「南アフリカ戦は、戦術的に出し切っていないと聞いている。マイボールスクラムやラインアウトなどでサインプレーはゼロだったらしい。W杯用に用意してきたものがあるそうで、ロシア戦や(第2戦の)アイルランド戦(28日、エコパ)で仕掛けてくるんじゃないか」

 つまり南ア戦の日本は持てる力を出し切って粉砕されたのではないということ。ティア1(世界の強豪10チーム)勢と対峙する厳しさを体感するとともに、W杯に向けて準備してきた“手の内”も隠したままだったという。それだけに、選手たちは“強豪相手にも十分やれる”という手応えをつかんでいるのだ。

 どんな内容のサインプレーかまでは前出の関係者に伝わっていないというが「(アタックコーチの)トニー・ブラウン(44)だったら(戦略は)たくさん持っているはず」と期待する。対戦チームの特性に合わせて戦術を採用するなど、チームの攻撃面を支える同コーチが、相手を幻惑する“秘策”を準備しているのは間違いない。

 振り返れば4年前のW杯イングランド大会。歴史的大金星となった1次リーグの南ア戦では、ひそかに練習を重ねてきたサインプレーを見事に成功させた。それが22―29とリードされた後半28分のトライにつながり、その14分後には、世界を驚かせた奇跡の逆転トライが生まれた。

 もちろん、対戦相手も本番を前に全てをさらけ出しているわけではない。警戒が必要なのは言うまでもないが、日本初の決勝トーナメント進出へ重要なポイントになりそうだ。