悲願の8強入りへ暗雲が垂れ込めた。20日開幕のラグビーW杯に臨む世界ランキング10位の日本代表は6日、埼玉・熊谷で行われた壮行試合で世界5位の南アフリカに7―41で完敗した。攻守とも機能せず、世界強豪との差を改めて痛感させられた。W杯本番で日本初のベスト8入りのためには「ティア1」チームから勝利しなければならないが、現状では厳しいと言わざるを得ない。開幕までにチーム再建はできるのか――。

 まさに完敗だ。「世紀の番狂わせ」と言われた2015年W杯イングランド大会の南アフリカ戦勝利から4年。徹底強化に取り組んできたスクラムなど善戦する場面もあったが、待っていたのは厳しい現実だった。

 日本は、前半だけで3つのトライを奪われると、盛り返すかに見えた後半もミス連発で点差を広げられる始末。自慢の攻撃陣もWTB松島幸太朗(26=サントリー)が後半20分に相手のミスを突くと、快足を生かして1トライを決めるのがやっと。攻守ともに日本の強さが際立った7~8月のパシフィックネーションズカップ(PNC)で3戦全勝した姿は、ティア1(ラグビー強豪10か国・地域)を前に完全に消えうせた。

 日本が、本番のベスト8入りを見据えると、同じ1次リーグA組のアイルランドとスコットランドというティア1チームから最低でも1勝が必要となるが、越えるべき壁はあまりに高い。フランカーのリーチ・マイケル主将(30=東芝)が「ティア1と試合をして何をやらないといけないかわかった。負けると自信が下がってしまうから、この2週間で取り戻すかが大事になってくる」と語ったように、選手たちも本番を間近に控え、自信喪失気味だ。

 プロップの稲垣啓太(29=パナソニック)はティア1勢の高いハードルを痛感する。「気付いていたけど、アタックの中で、ここで1本通れば…というところを確実に潰してきた。ディテールは向こうが上だった。ディテールでこれだけ差が出た。ティア1との戦いはそこを大事にしないといけないし、自分たちの小さなミスを一個一個(得点に)つなげてくるので…」と元世界王者・南アの底力、試合運びに脱帽するしかなかった。

 リーチ主将は「十分に時間はある。(日本は)修正能力は高いので」とW杯開幕までの立て直しに前向きだったが、残された時間は決して多くない。しかも主力に負傷者が続出中だ。前半4分にWTB福岡堅樹(27=パナソニック)が右ふくらはぎを負傷し、後半7分にはナンバー8のアマナキ・レレイ・マフィ(29=NTTコミュニケーションズ)が右肩を痛めて、ともに途中交代した。

 福岡に関しては、この日の時点でケガの程度は不明で、マフィは全治1~2週間程度とみられるという。フッカーの堀江翔太(33=パナソニック)とFW第3列の姫野和樹(25=トヨタ自動車)も負傷を抱えて別メニュー調整が続いており、核となる主力4人が開幕を万全の状態で迎えられるか未知数と言える。

 PNCでは順調な仕上がりを見せ、W杯への期待が高まっていたが、現実を突き付けられた日本は、試練を乗り越えて悲願のW杯8強入りをつかみ取れるか。