ラグビー日本代表は悲願を達成できるか。自国開催となるW杯が9月20日に開幕する。4年前のイングランド大会で優勝候補の南アフリカから大金星を挙げるなど躍進した日本は初の8強入りを狙うが、前回W杯メンバーの元日本代表PR畠山健介(33=サントリー)が現状を徹底分析。ジョセフジャパン1次リーグ突破のポイントと、前大会で大活躍したFB五郎丸歩(32=ヤマハ発動機)に続くヒーロー候補を指名した。

 ――W杯開幕まで残り8か月余りとなった

 畠山:もちろんワクワク感はあるけど、正直焦る気持ちがないわけではない。ニュージーランド(2011年)とイングランド(15年)の2大会を経験した中で、あのようなクオリティーの大会を日本の独自性を出しつつ、やることができるのか。2大会の盛り上がりを経験しているだけに少し心配もある。

 ――どう感じるのか

 畠山:お客さんや開催地、キャンプ地の自治体をどこまで巻き込めるか。自治体に対してラグビー界が「これをやってください」ではなくて、自ら動いて積極的に参加する機運を高めないといけない。あとは認知度が上がってきたとはいえ、まだ十分とは言えない。

 ――現在の日本代表については

 畠山:何かのきっかけが必要。きっかけさえつかめば、加速度的に成長して好成績につながる。その意味で南アフリカと本番前に対戦することもきっかけになり得る。前回大会で南アフリカに勝って波に乗ったのは間違いないし、大会前のジョージア戦に勝ったこともきっかけになった。

 ――目標はベスト8

 畠山:決勝トーナメント進出なら3勝1敗が一番あり得る形だろうけど、2勝2敗で突破がないわけではない。たとえば、11年(W杯で)のフランスは結果的に準優勝。一方で15年の日本は3勝も勝ち点差で決勝トーナメントを逃した。なので勝ち点(※)を意識して戦うのが大事。2勝2敗で並んだとき(同組の)ロシアとサモアに(4トライ以上挙げ)ボーナスポイントを取れる勝ちを狙って点差を詰める戦い方をする必要がある。

 ――同じ1次リーグA組の2強(アイルランド、スコットランド)はかなりの強敵だ

 畠山:メリハリが重要。手堅いだけでは勝てない。勝負に出ないといけないが、それを支えるセットピース(スクラムやラインアウト)に磨きをかけてほしい。FWがポイント? やはりラグビーはFWと思う。敵陣でボールを奪われて蹴られても、またFWがモールやスクラムで前に出てくれるだけで敵陣にいる時間が長くなり、相手にプレッシャーがかかる。時間とともに精神的、体力的に摩耗させられる。

 ――日本の注目選手は

 畠山:15年のメンバー以外ならナンバー8の姫野和樹(24=トヨタ自動車)かな。イケメンでパフォーマンスもいいし、バラエティー(番組)も出ている。日本ラグビー界の顔となる選手で、次の代表主将候補。だからこそ彼が代表の文化を引き継いでいってほしいし、今回の経験を23、27年のW杯につなげる役割も果たしてもらいたい。

 ――WTB福岡堅樹(26=パナソニック)が成長著しい

 畠山:昔は口下手だったのに、すごくしゃべれるようになっている。それは自信がついて成長した証拠。彼は東京五輪のセブンス(7人制)を終えたら医学の道に進むので、医師になってもバラエティー番組に出てラグビーの解説をしてくれたらうれしいかな。

 ――プレーの特徴は

 畠山:初速からトップスピードになるまでが速いので、外国人も外にいかれたら対応できない。ただテストマッチを見ると、彼にボールを集めすぎる感じがするし、トライまでボールをもらう位置が長いのも気になる。それに(福岡が)ケガをしたときに誰がその役目を担うのか。彼がいなくても成立するプランを考えないといけない。

 ――自身はW杯をどう考えているか

 畠山:モチベーションの一つが代表。その情熱は失いたくない。ギリギリまで何があるか分からない。11年W杯優勝のニュージーランドはケガ人が続出し、一緒にプレーしたスティーブン・ドナルド(35=現NEC)が急きょ招集された。僕は厳しい状況だけど、準備は続けていきたい。

※ラグビーW杯1次リーグは各組勝ち点上位2チームが決勝トーナメントに進出。勝ち点は勝利4点、引き分け2点。4トライ以上挙げると引き分け以外は勝利でも敗戦でも1点、負けても7点差以内の場合は1点。勝ち点が同じ場合は直接対決、得失点差、トライ差数の順で比べて順位を決定する。

☆はたけやま・けんすけ 1985年8月2日生まれ。宮城・気仙沼市出身。小学2年時に鹿折ラグビースクールで競技を始める。宮城・仙台育英高で花園に3年連続出場し、早大に進学。2008年にサントリーに入社した。W杯は11年ニュージーランド、15年イングランド大会に出場。日本代表キャップ数78は歴代4位(PRでは歴代最多)。178センチ、113キロ。