柔道男子66キロ級の世界王者・阿部一二三(20=日体大)が「練習でも無敗」を宣言した。10日、羽田空港から欧州に初の単身武者修行に出発。2020年東京五輪の星は“世界最強の男”の背中を追うかのように、あくなき強さを求めていく決意だ。

 阿部はオーストリアとドイツに計3週間滞在する。宿泊や食事に困ることはないものの、右も左も言葉も分からない環境に一人で身を置くのは20年間の人生で初めてだ。「今よりひと回り、ふた回り成長して帰ってこれると思う。自分がどういうふうに考え方が変わっているか楽しみ」と期待をふくらませた。

 オンとオフの切り替えをテーマに、積極的に異文化交流を図っていく。しかし、こと柔道に関しては阿部に“友好ムード”はない。「海外に行ってたくさんの選手と練習するにあたって、絶対負けられない。スキも見せられないと思う。世界王者らしく海外の選手と練習できたら」と王者の自覚を燃やした。

 昨年1年間無敗をキープし、2018年も「無敗」と「世界選手権2連覇」を目標に掲げている。一方で、練習においても「無敗」を追求する構えだ。

 柔道では、五輪金メダリストでも乱取りで手の内を明かすのを嫌って簡単に投げられてしまう選手と、100キロ超級で五輪連覇中の“世界最強の男”テディ・リネール(28=フランス)のように練習でもビクともしない選手がいる。阿部が目指すのは後者というわけだ。今回、現地で行われる国際合宿には同じ66キロ級で世界ランキング2、3位の選手も参加する予定で、阿部にとっては一層気の抜けない“戦い”になる。

 昨年は81キロ級の永瀬貴規(24=旭化成)が同じルートで武者修行に出た。ホームシックになりかけた永瀬から助言も受け、孤独との戦いには阿部も自信をのぞかせる。ライバルの飲料に禁止薬物が混入されたカヌーの不祥事が公になった直後だけに「気をつけないといけない」と警戒心ものぞかせたが、欧州で縦横無尽に暴れ回るつもりだ。