東京五輪での選手村利用について“慎重論”が浮上している。日本オリンピック委員会(JOC)のコーチ会議が28日、都内のホテルで行われ、各競技団体の指導者や関係者など約300人が出席した。開会のあいさつでは平岡英介副会長兼専務理事(69)が北朝鮮情勢による平昌五輪への不安が国際的に高まっていることに言及し、不安を払拭。一丸ムードを演出した。

 参加者は競技グループごとに分かれ、現状や課題を話し合った。その後、各グループの代表者が議論の内容を報告したが、その中でレスリングの栄和人強化本部長(57)は東京五輪に出場する選手の宿泊について「NTC(北区の味の素ナショナルトレーニングセンター)を使いたいという要望のほうが多い」と明かした。

 東京五輪の選手村は中央区晴海に建設される。そこに日本の選手がすんなり入ると思いきや、現状はそうではない。出席者の一人は「選手村に入ると、選手が雰囲気にのまれて舞い上がってしまう可能性がある。NTCは食事からベッド、枕まで使い慣れている選手が多い。NTCのほうがいい」と主張した。

 柔道の全日本男子の井上康生監督(39)は「何パターンか考えていかないといけない。NTCだと(会場の)日本武道館までそう遠くないですからね」と複数の選択肢があることを示唆。一方で「通常であれば、計量は選手村であるので選手村の活用もある」と話した。

 日頃NTCで合宿する競技団体にとって“NTC残留”のメリットは確かに大きい。選手のパフォーマンスを最大限に引き出すための検討は続きそうだ。