【柔道】阿部一二三 波紋呼ぶ極みの一本

2017年09月19日 11時00分

阿部も判定に不満ありだった?

 ハンガリー・ブダペストで開催された柔道の世界選手権男子66キロ級で金メダルを獲得した阿部一二三(20=日体大)が世界の柔道界に波紋を投げかけている。同大会では惜しくもオール一本勝ちを逃したが、阿部の技がキレすぎるあまり、一本とみなされてもおかしくない「技あり」を連発。国際柔道連盟(IJF)にジャッジの“改善”を求める声も上がっており、兵庫県出身の怪物は「柔道家の見本」としての存在感も強めている。

 阿部の圧倒的な優勝は世界を驚がくさせたが、その裏で、日本の柔道界ではあるシーンが“事件”と呼ばれて話題になっていた。60キロ級の元世界王者ゲオルギー・ザンタラヤ(29=ウクライナ)との準々決勝だ。技あり2つを先行した阿部はスピードを殺しつつ、相手の背中がしっかりと畳につく背負い投げで一本勝ちした。

 これに、日本の柔道界から上がったのは“同情の声”だった。「本人は『最後までコントロールしました』みたいなコメントしてたけど、あれは半分嫌みもあると思う。その前の2つの技ありもみんな一本。それを技ありにされちゃうから、ゆっくりと置くようにしながら落とした。『何でオマエら分かってくれねえんだよ。じゃあ、こうやってやるよ』ってね」(関係者)

 1月のルール改正で技あり2つによる「合わせ技一本」が廃止された。一本の持つ意味がこれまで以上に重要になるなか、柔道界で新たな問題となっているのは一本のあり方だ。技が完璧に決まったと思えても、相手の背中をきちんと畳につかせないと、一本と認識されない傾向にある。

 そこに本来の柔道との乖離が生まれる。もともと一本の基準は「だいたいあおむけ」「背中の70%がつく」とあいまいさを有していた。「スーパー一本」と呼ばれる完全な一本は勢いのあまり、相手が横倒しになることも多いからだ。全日本男子の井上康生監督(39)がシドニー五輪決勝で決めた内股による一本も、相手は回りすぎたため、肩から落ちた。背中がつかない裏投げなどの技もある。相手を崩し切っていた阿部の「技あり」は「一本」になってもおかしくなかった。

 他の国際大会では、寝技の最中に相手を裏返しにしただけで一本となるケースも散見されており、「背中つかせ競技」と批判が高まっている。
 前出の関係者は「阿部ぐらい強ければそっと置くように下ろしてってできるけど、でも、それって私らが本来、目指す技じゃない。柔道は技の錬度を競い合う競技。本当はパーフェクトにスパンと投げれるのに、そんな芸当しなきゃいけなくなっちゃった。それは100%の技じゃない」と警鐘を鳴らす。さらにはパイプのあるIJFに「ルールを変える必要はないが、解釈の仕方だけ変えてもらえばいい。背中ばっかり見るなと」と改善を求めた。

 柔道を正常な道に戻すためには“軌道修正”が必要。怪物の戦いぶりはこれからも世界の注目を集めそうだ。