【ハンガリー・ブダペスト1日(日本時間2日)発】柔道の世界選手権5日目、女子70キロ級で新井千鶴(23=三井住友海上)が初優勝を飾った。リオ五輪出場を果たせなかった期待のホープが、2020年東京五輪の金メダルへ向けて上々のスタート。日本の金メダルはこれで今大会6個となった。また女子78キロ級では前回女王の梅木真美(22=ALSOK)が銀メダル、佐藤瑠香(25=コマツ)は3位決定戦で敗れ、メダルを逃した。

 強かった。初戦から力強い柔道で勝ち上がると、準決勝でリオ五輪銀メダルの強敵アルベアル(コロンビア)を撃破。決勝はペレス(プエルトリコ)に強烈な送り襟絞めで「参った」をさせ、頂点をつかんだ。

 だが、新井はニコリともせず無表情のまま畳を下りた。そこでコーチと抱き合うとようやく笑顔。「何としても取りたいタイトルだった。(無表情だったのは)あまり意識がなかったです」と緊張感から解放されたようだった。

 昨年のリオ五輪代表レースでは当初から先行し、本命候補だった。しかし4月の選考会で敗れ、代表の座を田知本遥(27=ALSOK)に奪われた。その田知本が金メダルを獲得。リオでその瞬間を見届けた新井は素直に喜ぶことができなかった。

「(悔しさと)半々ぐらいでした。私が戦いたかったっていう気持ちもありました」。以来、田知本の試合は映像でも見ていないが、一方で「最後まで国内で争っていたので次はいけるっていう気持ち、次は取りたいっていう気持ちになったのは強いです」。

 そこで、練習の内容も見直し工夫した。「得意な形だけやるんじゃなく、いろんな組み手をやるとか、チャレンジ精神が動きの多様性になる。いろんな技、攻め方を持っていることが必要」。その視野は広がった。

 世界選手権、グランドスラム東京を連勝すれば、翌年の世界選手権代表権も得られる代表システムも「選手としては分かりやすく位置づけされている。決まっている分、狙っていきやすい」と前向きに受け止める。もう悔しい思いはしたくない。「一つひとつ目の前の試合を勝っていきたい」と新井は東京五輪まで走り続ける決意だ。