柔道女子48キロ級の近藤亜美(22=三井住友海上)が“父の鬼トレ”に背中を押され、世界選手権(28日開幕、ハンガリー・ブダペスト)で3年ぶり2度目の優勝を狙う。

 3日、都内で公開された代表合宿で、近藤は「気持ちをもう1回、東京(五輪)に向けるようにするのが一番大変でした」とリオ五輪後の苦悩を告白した。五輪後、多くのメダリストが休養に入る中、近藤は戦い続けることを選んだ。その結果、今大会はメダリストで出場するのは女子では近藤1人という状況。代表への思いは強いが、同時に「なんで私は休めないんだろう」と葛藤があった。

 そんな気持ちを抱えたまま迎えた今年の正月。実家の愛知に里帰りした時、思わぬゲキをくれたのが父・敬造さん(55)だった。

 40度の熱を出して倒れていた近藤は、なぜかバドミントンに誘われた。その時、父からかけられた言葉は「いつまでも寝ていたら豚になるぞ!」。熱は38度まで下がっていたものの、さすがに絶不調。少しプレーして「やめたい」と訴えたが、許されなかった。

 結局「勝つまでバドミントンやらされました」(近藤)。時間は1時間にもわたった。柔道に対しても「お前が休んでもお前は得をしないよ」と活を入れられ、近藤は4月の選考会に集中することになった。

「代表を譲ったら取り返すのがどれだけ大変か、自分が一番分かっている」。近藤は父に恩返しするためにも、頂点への歩みを止めない。