柔道の全国高校選手権最終日(20日、東京・日本武道館)、前日の女子52キロ級を制した阿部詩(16=兵庫・夙川学院高)は団体戦でも優勝を果たし、2冠に輝いた。女子最優秀選手賞も獲得し、大会の主役となった新ヒロインを“平成の三四郎”古賀稔彦氏(49)が絶賛。2020年東京五輪の星の強さの秘密を分析した。

 歓喜の瞬間を迎え、他のチームメートが涙を流す中、阿部はただ一人、笑みを浮かべ“大物ぶり”を見せつけた。

 阿部は、世界選手権(8~9月、ハンガリー)代表選考を兼ねる全日本選抜体重別選手権(4月1、2日、福岡国際センター)の優勝を宣言。松本純一郎監督(48)も「個人戦で優勝したら次の日はガタガタになるんです。それでも阿部は全部(試合を)取ってきた」と精神力をたたえた。

 そんな阿部を見た古賀氏はもう一つの強さに着目した。

「そこそこのケガであっても、それを上回るだけの勝負に対する執念が強い。あのタイプはケガというマイナスが火をつけるタイプ。ケガしてなお、プラスアルファの力を出せる」

 阿部は準決勝で左手親指を突き指し、苦痛に顔をゆがめた。アイシング処置を受けたものの、決勝はテーピングで固定する手負いの状態。それでも試合が始まると積極性は変わらず、指導による反則勝ちを収めた。

「トップに立てる選手はマイナスを自分の力に変えれる。そういうところを彼女は持っている」と話した古賀氏自身も、バルセロナ五輪では左ヒザを負傷しながら、執念で頂点に立った。逆境での強さは金メダリストになる大事な要素でもある。

「勢い的には1か月単位で伸びる時期。これで今年のさまざまな大舞台においては、彼女の進化した柔道を見れる」と古賀氏は快進撃にも太鼓判。阿部にとってはこれ以上ない“金言”となった。