総合格闘家の青木真也(33)が柔道界に新たな刺激を与えた。23日、都内で行われた全日本男子の合宿に参加し関節技などの実技指導を行った。

 これまでの関係を考えれば、プロ格闘家が招聘されるだけでも画期的なこと。代表選手はその卓越した技術に聞き入り、充実の時間を過ごした。講習の最後には井上康生監督(38)が「仕事に対しての心構え」を質問。青木は格闘家の置かれた厳しい環境を告白した。

「ベルトを取っても団体がなくなるかもしれない。恥ずかしい話、恵まれた環境ではない」。派手な印象の裏に隠れた苦労と現実をつぶさに語り、その上で「柔道の時は全部やってくれた。なのでボクらは自立しなきゃいけない」と力を込めた。

 この言葉に驚いたのが若き柔道家たちだ。リオ五輪90キロ級金メダルのベイカー茉秋(22=東海大)は「『五輪だけだった』とならないように、ハングリーさを持って貪欲にタイトルをつかみにいこうという気持ちになった」。

 さらに柔道エリートとして育ってきた2020年東京五輪世代の心も揺さぶった。

 66キロ級の怪物・阿部一二三(19=日体大)が「最後の話を聞いて、そのぐらいやらないとトップにいけないと思った」と言えば、暴走王・小川直也(48)の長男・雄勢(20=明大)も「プロとして全然違う意識の高さがあった」と表情を引き締めた。柔道界は技術以上に学ぶことが多い一日となった。