リオデジャネイロ五輪で、日本選手団はロンドン五輪を上回る金12個、銀8個、銅21個の合計41個のメダルを獲得した。しかし、万々歳というわけでもないようだ。「好感度」のバロメーターでは、ベテラン勢の圧倒的存在感の前に、次代を担う若手がインパクトを残せなかったからだ。4年後の東京五輪に向け、新たな課題が浮き彫りになった。

 数々の感動のドラマが生まれたリオ五輪で、主に注目を集めたのはベテラン勢だった。大手広告代理店関係者が言う。

「いつもの五輪に比べ、もともとのスター選手が活躍して、より価値を高めた。無名の選手が注目度を上げて『キャスティングが殺到して困っている』という話は聞いていない」

 その独自調査によると、最も市場評価を上げたのは男子テニスの錦織圭(26=日清食品)で「そもそも好感度、知名度ともスポーツ界でトップだったのが、メダル獲得でさらにその価値が向上した。不動にさせたと言ってもいい」(前同)。これに続くのはレスリング女子の吉田沙保里(33)、体操男子の内村航平(27=コナミスポーツ)、卓球女子の福原愛(27=ANA)だったという。

 母国開催の東京五輪に向けて、実力と人気を併せ持つフレッシュな若手の台頭は不可欠。さまざまな産業の経済効果にもつながり、当然、広告業界も期待していた。

 しかし“合格ライン”をクリアしたと言えるのは卓球女子の伊藤美誠(15=スターツ)、レスリング女子48キロ級の登坂絵莉(22=東新住建)、競泳女子200メートル個人メドレーの美人女子高生スイマー・今井月(16=豊川高)の3人ぐらい。伊藤と登坂はメダルを獲得して存在感を示したが、準決勝敗退の今井が注目を集めたのは「期間中のコカ・コーラのCMとビジュアルの相乗効果」(前同)で、全体的にはベテラン勢に押された印象が否めない。

 特に今大会は時差が12時間もある地球の裏側での開催ということもあり、民放を中心にテレビの視聴率が苦戦。特に「若年層はボロボロだった」(前同)。ライブより各局が編集したニュースを見る機会が多かったため、知名度のある選手に押されて新星のインパクトが弱まったという側面もあるという。

 大会前半でメダルラッシュに沸いた柔道も「メダルを取り過ぎちゃって、取っている人がフォーカスされない。強いて言えば、男子監督の井上康生です」(前同)という皮肉な結果に…。ベテラン勢が4年後に現役を続けている保証はなく、過去最多のメダル数を獲得したとはいえ、広告業界の危機感は強い。