リオデジャネイロ五輪で大きな“使命”を帯びているのが、柔道男子100キロ超級代表の原沢久喜(24=日本中央競馬会)だ。最重量級ではテディ・リネール(27=フランス)がニッポン柔道から「世界最強」の称号を奪って長らく君臨。絶対王者をどう倒すのか、原沢を直撃した。選考レースに出遅れ、世界選手権出場経験もない“究極の追い込み馬”は、リオを「凱旋門賞」と位置づけて奇跡を起こす。

 ――今月上旬のスペイン合宿でリネールと2回、乱取りした。2年前に日本で練習して以来の“対戦”だったが、感触は

 原沢:以前は組み手もさばかれて、なかなか自分の形になれないことが多かった。対応できるようになっていたし、何回かチャンスもあった。自分の得意な形になる部分はあった。少し自信はついたかなと思います。

 ――これまで試合での対戦経験はない。五輪へ戦略は立てられたか

 原沢:内股、内股じゃかからないと思う。もつれ際だとか組み際が勝負になってくる。勝負は後半かなと。最初はしのいでって感じですよね。前に出ていく柔道、積極性という部分ではリネール選手を上回っている。

 ――全日本男子の井上康生監督(38)からアドバイスは

 原沢:スペイン合宿で練習の空き時間に組み手のことだったり、いろいろ教えてもらいました。前々からそうですけど、より細かい部分を教えてもらっている。

 ――ロンドン五輪で男子は金メダルゼロに終わった

 原沢:実家で見ていました。外国人も強くなって、簡単には取れないとすごく思いました。(リネールは)「他の試合と雰囲気違うな」というのはありましたね。スペインで見た時も、すごい体を絞って合わせてきていると思いました。

 ――最重量級は日本にとって特別な階級だ

 原沢:意識していますし最重量級という自覚は持っているんですけど、そこを意識しすぎても自分の柔道ができなくなってしまう。リネール対策ばかりやってても、そこまで行けなかったら何の意味もなくなる。配分的にはリネール選手もほかの選手も変わらないくらい対策をやっています。

 ――メダルを取ったらJRAの表彰式プレゼンターも希望している

 原沢:(所属が)JRAなんで、そういうのもできたらいいなと思います。どこでも引き受けます。有馬記念とか、日本ダービーとか、デカいところでできたらいいですけどね(笑い)。

 ――五輪を競馬のレースに例えると

 原沢:やっぱり凱旋門賞ですね。国際的な大会なので。今、ボクはまだ中盤ぐらいです。最終的には追い越したい。目標は金メダル。金だけですね。今はリネール選手が最強なので、それを倒したい。

 ――柔道の魅力とは

 原沢:人が人を投げるっていうのはなかなかほかのスポーツにはない。組み合って、激しさとか豪快さが見られるスポーツかなと思います。スカッとしますね。

 ――柔道にのめり込んだのはいつ

 原沢:(日本)大学になって高校とは違う上の世界を見て、そこで結果を残せるようになってきてのめり込んだ。それまではのめり込んでなかったです。「やめてーな」ぐらいの感じでした(笑い)。

 ――オフは

 原沢:基本的には、そんなに外出したりしないですね。中でゴロゴロするか、友達とお酒飲みに行くかです。

 ――現役はいつまで

 原沢:東京五輪まではやりたい。まだ強くなれると思っている。東京五輪までしっかり出てメダル取って、あとはゆっくり暮らしたいです。

 ☆はらさわ・ひさよし 1992年7月3日生まれ。山口・下関市出身。6歳から柔道を始め、日新中→早鞆高→日大と進学し、日本中央競馬会(JRA)へ。2015年全日本選手権優勝。選考レースでは国際大会で破竹の7連勝を果たし、逆転でリオ五輪代表に選出された。得意技は内股。191センチ、123キロ。