<柔道世界選手権3日目(26日、カザフスタン・アスタナ)男子73キロ級>大野に敗れた中矢は「最後の詰めが甘かった。これでリオ五輪が決まるわけではないので、もう一度やり直したい」。先行していたリオ五輪争いは振り出しに戻り、危機感を募らせた。

“ALSOK戦隊”でレスリング女王の吉田沙保里(32)とコミカルに共演。さわやかなイメージを持つ中矢だが、今季は担当の金丸雄介コーチ(35)との関係に、“すきま風”が吹いた。

 その原因は中矢の気まぐれなヤル気のスイッチだった。「彼自身、今年に入って、なかなかヤル気のスイッチが入ってなかったところがあって…。ヤル気を出すのに大変だったなと思います」(金丸コーチ)。ハッパをかけ続けたものの、どうにも気持ちが乗らない。8月上旬の宮崎・延岡合宿でも金丸コーチが最初に話したのは「ヤル気」の部分だった。

 ところが、中矢は金丸コーチに「厳しすぎる。もっと褒めて」とまさかの逆要求。“根負け”した金丸コーチは、以後、ネガティブな言葉を封印し、中矢を褒めちぎる指導に転換した。

 中矢が守りたかったのは首のコンディション。持病の頸椎椎間板ヘルニアが再発し、慢性的な痛みと闘っていた。競技をやめない限り、完治はないという。気まぐれに見えたのは、常に全力を出し続けては本番まで持たないという不安があったからだ。中矢がスイッチを入れたのは延岡後の国内最終合宿。別人のように戦闘モードになり「金丸コーチが言う『オン』の状態でどれだけ戦えるか」と切り替えた。金丸コーチにも「ケガとか持っている時、痛かったりする時は力が抜けちゃう時があるんですよ」と釈明した。

 ロンドン五輪は銀メダル。リオ五輪は集大成と位置づける。「金メダルを取れたらロンドンの悔しさは晴らせる」。シ烈な代表争いは続くが、オンの日もオフの日も気持ちがブレることはない。