柔道男子60キロ級で日本初の五輪3連覇を達成した野村忠宏(40)が24日、所属先のミキハウスを通じて現役を引退することを発表した。野村は自身のホームページ上で、2年ぶりの復帰戦となる29日の全日本実業個人選手権(兵庫・ベイコム総合体育館)が最後の試合となることを明かし「現役最後の勝負、精一杯戦います」と表明した。

 1996年アトランタ、2000年シドニー、04年アテネで金メダルを獲得。しかし、その後は故障に悩まされながら、現役にこだわり続けた。天才肌で、柔道界のスーパーエリート。柔道一家の家系に生まれ、名門天理大柔道部で鍛えられた。しかも、イケメンときている。本来なら国民栄誉賞を受賞してもおかしくない実績の持ち主だ。

 だが、野村の前に立ちはだかったのが“ヤワラの壁”だった。五輪、世界選手権と、野村の60キロ級は女子48キロ級と同日に試合が行われる。その48キロ級には国民的ヒロインの田村亮子(谷亮子参議院議員)がおり、話題は当然、ヤワラちゃんに一極集中。野村の偉業は脇に追いやられた。

 おまけに野村はこのことを“ネタ”にし始めた。当時、本紙が話を聞くと、ヤワラちゃんへの恨み節が大爆発。「田村の人気はわかっているけど、悔しいっス。新聞とかで“田村が金、野村も金”っていうのが一番腹立つ。“も”って何やねん!」などと毒舌全開でぶっちゃけた。

 天才柔道家なりのリップサービスだったが、記者会見やテレビ番組でもこうした発言を連発。マスコミ受けの良かったヤワラちゃんに比べ“斜に構えた天才”のイメージにつながった面もある。

 ただ、素顔は礼儀正しく実直な男。取材のお礼だと、本紙編集局に直接電話をかけてきたこともあった。アトランタで共に代表だった暴走王・小川直也(47)は「タレントや議員さんにはなれないかもしれないけど、彼の柔道選手としての生き方は後輩たちのためになるよ。今度は指導者として60キロ級の後継者を育ててほしい」とねぎらった。