まだ喜べない。全日本柔道連盟が山下泰裕副会長(58)の国際柔道連盟(IJF)理事就任をかたずをのんで見守っている。

 13日、世界選手権(24日~、カザフスタン・アスタナ)前に開かれる21日のIJF総会で講道館の上村春樹館長(64)とともに山下氏が理事に就任すると、一部で報道された。日本人の理事は2013年に上村氏が退任して以来、不在が続いていた。それだけに柔道界にとっても吉報で「理事がいる、いないはものすごく大きい。上村さんがやっていた時はさまざまな情報が事前に分かった」(関係者)と歓迎する声は強い。

 ところが、全柔連幹部は水面下での動きを認めつつも「いつひっくり返されるか、分からない」と正式決定まで慎重な姿勢を崩さずにいる。その理由は昨年の苦い経験にある。

 山下氏は昨年6月、IJFのマリウス・ビゼール会長(57)と会談した上で、15年秋に日本で世界ジュニア選手権を開催する意向を表明した。ところが、8月の理事会で日本は選ばれず、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで開催することが決定。“はしご”を外された山下氏は「想定外…」と天を仰いだ。これがトラウマになっているのだ。

「あの時も口約束ではあるけど、確約に近かった。今回の件もビゼールの口ぶりを頼りに動いているけど、分からない」(同幹部)。今回の理事はビゼール会長の指名で決定する。フタを開けてみるまで、ナーバスになるのも仕方がない。