無差別級で争われる柔道の全日本選手権(29日、日本武道館)に出場した男子73キロ級五輪2連覇の大野将平(30=旭化成)は、最後まで真っ向勝負で戦い抜いた。

 2階級上で90キロ級の前田宗哉(26=自衛隊)との初戦は「正面からの真っ向勝負」の見事に体現。巴投げや大内刈りなどを果敢に繰り出したが、中盤過ぎに有効を奪われた。その後も大野は攻めの姿勢を貫くも、2014年大会以来の勝利とはならなかった。

 敗れたとはいえ、有観客の会場からは拍手が沸き起こった。大野は「勝ち負けを超越したものを観客のみなさんと共有できたらいいなと思い、足を止めて打ち合わせていただいた」と神妙に語った一方で、限界を感じた点もあった。「体重差で厳しい戦いは理解していた。『柔よく剛を制す』というのは幻想に過ぎない」と言い聞かせる場面も見られた。

 東京五輪後、初となる実戦は悔しい結果に終わった。今後については「なかなか声を大にして『パリ五輪を目指します』と言うことはできないが、この(試合の)感性を持ち帰って、どういった動きを自分の心が見せるのか、自分自身も期待しながら待ちたい」と話すにとどめたものの、その目は前を向いていた。