柔道日本一の原沢久喜は「ウサギにならないカメ」

2015年04月30日 16時00分

初優勝した原沢

 体重無差別で柔道日本一を争う全日本選手権(29日、東京・日本武道館)の決勝で、原沢久喜(22=日本中央競馬会)が、昨年の世界選手権銀メダリストの七戸龍(26=九州電力)を下して初優勝を飾った。若き全日本王者は「ウサギにならないカメ」と、師匠が絶賛する大器。低迷するニッポン柔道重量級の再建を担い、大逆転での2016年リオ五輪の頂点を目指す。

 原沢は「周りからも優勝はないと思われていたと思うが、勝ててホッとしている。柔道家として夢のようです」と素直に喜んだ。序盤から積極的な攻めで七戸に2度の指導を与えると、相手がやや強引にかけてきた足技を耐え、逆に小外刈りで返して有効を奪った。

 2年前には準優勝。その後、思うような成績を残せなかったが、悲願の柔道日本一に輝いた。一体どんな男なのか。「原沢はカメです。愚直なまでに自分を追い込む。持っている能力は高く、ウサギになってしまいそうなところをカメになれるのです」と話すのは母校日大の監督で、2度全日本王者になった師匠の金野潤氏(48)だ。

 日大柔道部は柔術に優れた総合格闘家の青木真也(31)を寝技の指導に招くなど、ユニークな練習を取り入れていることで知られる。様々な練習メニューがある中、原沢は準備体操すら一切、手抜きせず「これをやれ」と言われたら「やめろ」と声がかかるまで続けるという。

 普段は口数も少なく、おっとりとした性格で、大学柔道部にいがちな威厳のある怖~い先輩ではない。「後輩にも、からかわれるくらいですよ。合宿所でも、柔道着を自分で洗っちゃうくらいですから。でも畳の上に立つと目が変わる。あの鋭い目がいいんです」(金野監督)。ひとたび畳の上に立つと豹変。勝負魂を炸裂させるのだ。

 試合後の強化委員会で、世界選手権(8月、カザフスタン)の100キロ超級代表は七戸に決まり、海外での実績不足を理由に原沢は漏れた。それでも、全日本柔道連盟の山下泰裕強化委員長(57)は「私は原沢を楽しみにしている。一番伸びシロがある。今後実績を積んで、リオ五輪候補に名乗りを上げてくれるのを楽しみにしている」。低迷の続くニッポン重量級の“救世主”になることを望んでいる。

 金野監督も「技術だけ見れば小学生のトップにも負けるくらい。まだまだ、あいつはこれからです」と今後への期待は大きい。原沢は「今後に大きな自信になった。五輪が自分の最終目標なので、何が何でも出場して優勝したい」。カメが大逆転でリオ五輪の金メダルを狙う。