柔道界の先駆者になる――。東京五輪柔道男子60キロ級で日本の「金メダル第1号」を獲得した高藤直寿(28=パーク24)はさらなる高みを見据えている。自国開催の祭典で5年前のリベンジを果たしてから早くも3か月が経過。そんな中、3年後のパリ五輪に向けて再スタートを切る世界王者が本紙の単独インタビューに応じ、あのレジェンドが成し遂げた偉業への思いや、趣味のゲームを生かした競技普及案などを激白。さらには、どんな時も手を抜かない高藤流子育て術も明かしてくれた。

 ――金メダルを手にした実感は

 高藤 ありがたいことにいろんなお仕事に声をかけていただける点で銅メダルの時とは全然違うなと思いますね。やっぱり何をする時も、金メダリストは一番最初に呼ばれますし、銅メダルの時はそれが悔しいと思っていたので、金メダルを取れて本当にうれしいです。

 ――テレビにも積極的に出演している

 高藤 僕が昔に五輪をテレビで見て、五輪後に活躍した選手がいろんな番組に出ているのを見て、五輪ドリームってあるんだなって思った。その先輩方と同じように僕らは夢を与える立場なので、できるだけテレビに出たいですし、知名度が上がることで生活しにくくなる部分もあるかもしれないですけど、金メダリストはそれらも含めてすごいことなんだなと実感しているので、子供たちにいろいろと感じてもらえたらと思います。

 ――五輪前には金メダルを取ったらゲーミングPCを買うと話していた

 高藤 五輪が終わった後に気付いたら、ほぼほぼ欲しいものがそろっていました(笑い)。なので、何も買っていないですね。でも、ゲームをする時間がもらえたので、本当にありがたいですね。

 ――子供たちともゲームをする

 高藤(対戦型オンラインゲームの)「フォートナイト」を子供たちとも一緒にやっています。まあ、わざと負けたりは絶対にしないですね。むしろ泣かせるくらいです(笑い)。厳しさを教えるのも大事ですし、やっぱり僕は負けたくないので。忖度していても子供たちのためにはならないですし、柔道でも負けて強くなりたいと思うじゃないですか。そういうところを教えていこうかなと思っています。

 ――練習はいつから再開する

 高藤 今は体をつくり上げてから本格的に追い込んでいこうかなと思っているので、本格的には11月ぐらいから。東京五輪で金メダルを1回取ってもまだ行けるっていう気持ちがあったので、もっともっと進化していい勝ち方をして、2連覇を達成したいです。

 ――2024年パリ五輪後のプランは

 高藤 28年ロサンゼルス五輪までやりますよ。パリ五輪で金を取れたら、60キロ級で3連覇の野村(忠宏)さんの偉業に挑戦できるじゃないですか。スタートラインにやっと立てたので、ロスまでやりたいですね。体力はたぶん落ちていくけど、どうやって向き合っていったら勝てるのかなっていう前向きな気持ちですね。

 ――海外での武者修行も考えている

 高藤(コロナが落ち着いたら)ジョージアに行きたいですね。ジョージアは五輪もですけど、力を付けていますし、パワフルなのにしなやかさもあるジョージア独特の柔道スタイルの部分に関しては、日本の選手も持っていない部分だと思ったので、いろいろと吸収できたらと思っています。

 ――柔道の魅力を発信したい

 高藤 柔道の面白さっていうのを本当に幅広い方に見ていただきたいです。たぶん見てもらえれば面白いと思うんですけど、たぶんそこまで行きついていないんですよね。最近はゲームの方でもお仕事をもらえるようになってきたので、ゲームを好きな人が「誰あの人?」みたいなところから柔道を知ってもらえればありがたいですし、ゲーム実況の高藤直寿を生で見たいから柔道場に来たり、柔道の試合に来てくれるという形でもいいので、まずは裾野を広げることからですね。

 ――サッカー元日本代表MF本田圭佑(スドゥバ)みたいなイメージか

 高藤 ちょっと違うかもしれないが、そういったイメージではありますね。eスポーツの方も盛り上がってきて、スポーツとして認知されるようになってきたと思うので、そういったところでも両方盛り上げられたらいいですね。

☆たかとう・なおひさ 1993年5月30日生まれ。栃木県出身。7歳から柔道を始め、小中高と各年代で日本一を経験。東海大進学後、2013年世界選手権60キロ級で優勝を果たすと、17、18年大会でも頂点に立った。五輪では16年リオ大会で銅メダル。今夏の東京大会では「高藤スペシャル」と呼ばれる変則的な大腰など、多彩な技を武器に、日本人金メダル第1号に輝いた。趣味はゲームで、自宅には「ゲーム部屋」があるほど。160センチ。