柔道日本代表が12日、国際大会のグランドスラム(GS)パリ大会(16、17日)へ出発した。

 今大会は男子の鈴木桂治新監督(41)にとって大事な初陣。出発前には「パリ五輪へ向けて時間は大事になってくる。選考も含めて時間があるようでない。やることがたくさんあるので、少し焦りを感じています」と率直な心境を口にした。

 メダルを量産した東京五輪組は不在。3年後を見据え、代表内の活性化を意識して派遣メンバーを選考した。鈴木監督は「金メダリストを含めた五輪代表に大きなリードがあるという考えは危険。あくまで一歩リードくらいで見ていきたい」と見解を示した上で「追う立場の選手、五輪代表の真後ろにいる選手たちを選出した」と説明。13人という派遣人数については「いろんな人にチャンスを与えたい。非常に大所帯で行くけど、その分、隣にいる選手へのライバル視が出てくると思う」と相乗効果を期待した。

 挑戦者の気持ちは誰よりも熟知している。鈴木監督は「私自身も(2000年の)シドニー五輪で井上康生前監督が優勝した瞬間は本当に悔しくて、絶対にこの舞台に立つっていう思いが芽生えた大会でした」と回想。その4年後、アテネ五輪男子100キロ超級で見事に金メダルを獲得した経験を踏まえて「追う立場の人間の心境、代表を勝ち取る気持ちをより奮い立たせたい」と話した。その一方で「こういったワンチャンスをものにする力をぜひ見せてもらいたい。内容も大切かもしれないけど、しっかり結果を残すという位置付けで見たい」とシビアな目も光らせている。

 取材中、何度も「井上監督…いや、前監督が」と言い間違え。「監督って呼ばれる機会はまだそんなに多くなくて」と苦笑したが、パリ五輪で日本代表を背負う覚悟はできている。その地へ乗り込む心境を問われると「実際にフランスに入ると緊張感は増していく。そろそろ街もチームもオリンピック色になってくると思う。どんどん士気が上がってくるので、今回はパリを感じてきたい」と目を輝かせた。