20日に肝内胆管がんのため死去したロサンゼルス、ソウル五輪柔道95キロ超級金メダリスト・斉藤仁氏(享年54)の柔道殿堂入りが浮上している。

 突然の訃報で悲しみに覆われた柔道界だが、命をかけて日本柔道の発展に尽くした斉藤氏の功績をたたえる声が相次いでいる。総本山・講道館が定める殿堂入りもその一つで、関係者は「実績は値する。全日本選手権、世界選手権、オリンピックの3冠王。それ以上はない」と斉藤氏が受賞する可能性を示唆した。

 柔道殿堂は柔道の発展に特に顕著な功績を残した柔道家を顕彰している。「物故者」が条件でこれまで19人が殿堂入り。

 日露戦争の旅順港閉塞作戦で活躍し“軍神”とあがめられた広瀬武夫中佐(六段)も名を連ねている。斉藤氏は選手としての輝かしい成績はもちろん、病魔に侵されながらも強化委員長として最後まで職をまっとうした。講道館の上村春樹館長(63)も斉藤氏を高く評価しており、柔道殿堂表彰規定に基づき柔道殿堂選考委員会が開かれれば、新たな勲章が加わる可能性は高い。

 一方、全日本柔道連盟の幹部は「あれだけの功績を残した人。IJF(国際柔道連盟)の殿堂入りもするんじゃないか」と斉藤氏の世界柔道殿堂入りも後押しした。ただ、選考基準はあいまいで同幹部は「(IJF会長のマリウス)ビゼールの腹一つのところがある」と話し、斉藤氏の推薦には慎重だった。

 いずれにせよ、斉藤氏の柔道界への貢献は永劫語り継がれるもの。八段から九段への昇段も含め、柔道家として惜しみない栄誉を贈られそうだ。