東京パラリンピック・柔道競技(28日、日本武道館)、女子57キロ級で2大会連続のメダル獲得を目指した広瀬順子(30=SMBC日興証券)は〝二人三脚〟で道を切り開いてきた。

 順子は2015年に男子90キロ級代表の広瀬悠(42=同)と結婚。悠は選手として活動する傍ら、順子のコーチも兼任。今大会に向けては「順子さんに銅メダル以上を取らせてあげたい」との思いで、新型コロナウイルス禍の中でも支え合いながら練習に取り組んできた。

 順子は高校時代にインターハイ出場を果たした実力者だが「喜びというよりも大変っていう思いが大きくて、あまり良い思い出はない」。過去の経験から「高校からのつらい柔道を引きずってしまっていた」と殻に閉じこもった柔道スタイルから抜け出せずにいた。

 そんな順子に対して、結婚して間もないある日、悠はアドバイスを送った。

「もう大人なんだから、今までと同じ柔道じゃなくて、きついことも楽しく取り組んだ方が強くなれるよ」

 今までとは違っても大丈夫――。「練習中に笑顔になることもあるし、楽しさを自分で感じるように柔道に取り組むになったので、練習が楽しいと思えるようになった」。順子の気持ちに大きな変化が生まれた。

 柔道に対して前向きな気持ちで取り組むようになった順子は、16年リオ大会で日本人女子選手で初となる銅メダルを獲得。今大会は「練習してきたことを出し切った試合が金メダルにつながるように、精いっぱい頑張りたい」と決意を述べていた。

 しかし、28日の試合では準々決勝で敗戦。敗者復活戦は勝利を収めたが、3位決定戦ではゴールデンスコアの末、合わせ技で一本を奪われた。順子は「悠さんに心から感謝している」と言葉を詰まらせた。

 メダルにはあと一歩届かなかったが、悠がいたからこそ、ここまで来れた。29日には悠の一戦が控えている。順子の思いを胸に、今度は悠が大一番に挑む。