東京五輪の柔道競技最終日(31日、日本武道館)、新種目に採用された「混合団体」の決勝で日本はフランスに敗れて銀メダルに終わった。試合後、全日本男子の井上康生監督が報道陣の取材に応じ、3月に53歳で急逝した1992年バルセロナ五輪男子71キロ級金メダルの古賀稔彦さんへの思いを明かした。

 戦前では金メダル最有力候補だった日本。初戦となる準々決勝はドイツに4―2と逆転勝ちし、準決勝ロシア・オリンピック委員会(ROC)に4連勝を収めたが、決勝はフランスにあえなく敗戦。「みなさんの期待に応えられなかった。有終の美を飾れなかった。選手たちを勝たせられず、悔しい」と唇を噛みながらも「選手たちは厳しい環境の中、8日間素晴らしい試合をしてくれた」と褒めたたえた。

 とはいえ、個人男女14階級で男子5個、女子4個と合計9個の金メダルを奪取。井上監督は古賀さんの弟分でバルセロナ五輪男子78キロ級金メダルの吉田秀彦氏(パーク24総監督)が制作を依頼した古賀さん追悼モデルの時計を着用し、選手、コーチ陣が思いを1つに戦い抜いた結果、過去最高の結果をマークした。

 かねて「古賀さんは私にとってのヒーロー」と語っていた井上監督は「いつも笑顔でいろんな方々に温かい言葉をかけてくださる素晴らしい人間性を持っていた。この時計は報道していただいた通り、吉田秀彦さんと(古賀さんの)奥さんがデザインしていただいて、選手ともに戦ってほしいとの思いで寄贈していただいた」と述べた上で「古賀さんの魂を受け継ぎながら我々も戦えたと思う」と感謝の言葉を口にした。

 混合団体は悔しい結果に終わったが、8日間の戦いぶりは古賀さんへの最高のプレゼントとなった。