東京五輪の柔道競技4日目となった27日、永瀬貴規(27=旭化成)が男子81キロ級で2018年世界王者のモエライ(モンゴル)を破って、金メダルを獲得した。これで男子代表は4日連続の階級制覇。この上ない結果が出ているが、本紙解説を務めるバルセロナ五輪男子95キロ超級銀メダルの〝元暴走王〟小川直也氏(53)が気になる点とは――。


【小川直也の暴走レッドゾーン】永瀬君は終始、落ち着いていたね。リオ五輪ではマークがきつかったけれど、彼は翌年に大ケガして手術し完全に1年間休んでた。その間に若い選手が出てきて、その流れになったので世界選手権には出られなかった。

 ある意味、ここ数年は世界からすればノーマークの存在。今回もみんな「昔のナガセじゃない」と思っていたのか、しぶとく粘り強い永瀬君の柔道を甘くみていたんじゃないかな。でも、彼は去年から調子を取り戻している。ブレない姿勢を貫いたからこその勝利だと思うよ。

 これで日本男子は4日連続の金メダルか。本当にすごいね。ただ一つ、オレには不思議なことがある。永瀬君もそうだけど、みんな喜びを前面に押し出してガッツポーズとかやらないんだろってこと。やっぱりコロナで五輪がこういう状況なので、選手たちは気にしているのかね。気持ちはわからないでもないが、もうちょっと喜んでもいいんじゃないの。

 こういう状況になったって、選手は悪くないんだから。女子で阿部(詩)さんが思いきり喜んでいたけど、ものすごく伝わるものがあったし、気にする人もいなかったんじゃないかな。

 もともと前回(1964年)東京五輪の無差別級で神永(昭夫)先生に勝ったヘーシング(オランダ)が礼を重んじて喜ばず、オランダの関係者にも「喜ぶな」ってやった有名な話があってね。これがあって今の選手も「あんまり喜ぶな」と言われているのかもしれないけれど、時代が違うしな。一生懸命、準備してきて最高の結果を出したんだから、素直に喜んでいいと思う。

 真面目なキャラは大野(将平)君だけでいいよ。勝ったら素直に喜んでよ。それが自然だし、いろいろあったけど五輪を開催しているんだから、日本中に元気を届けてほしいな。