全日本柔道連盟(全柔連)の理事会が14日、リモートで開催され、前事務局長による職員へのパワーハラスメント行為に関する検討会の報告が行われた。

 同事案は昨年2月、新型コロナウイルス感染者多数発生を巡る全柔連のヒアリング調査の中で発覚。山下泰裕会長(64)の指示によってコンプライアンス委員会は調査を実施し、同年11月に報告書を提出していた。前事務局長は今年1月に自己都合を理由に自主退職。しかし、全柔連は一連の問題を部外に公表せず、2月になってメディアの一報で初めて明るみに出たことで〝隠ぺい〟と批判された。その後、3月の理事会の決定で「検討会」が設立され、この日に報告がなされた。

 検討会はウェブ方式で3月26日から5月19日まで計5回にわたって開催。事務局長の人事が対外的に公表されず、職員に対する説明もなかった点については「速やかに理事会の承認を得ることが必要であったと考えられる」とされ「必要な対外公表や事務局職員への説明などについても相応の措置が取られるべきであった」と結論づけられた。

 これを受けて、山下会長は「私の対応が、隠ぺいを図ろうとしていたのではないか?と疑惑を持たれた。(周囲から)できるだけ早く事務局の方々に会長から直接、話をした方がいいとアドバイスを頂きながら、そういう対応をしてこなかったことについて、私自身、様々な事情があったわけですが、大変申し訳なかったと思っています」と謝罪。調査に当たった検討会については「非常に熱心に検討していただいた。真摯に受け止めて、適切な対応を取っていかなければいけない」と話した。

 一方、今回の騒動の根本的な問題点を問われた山下会長は「一番の問題は私がJOC(日本オリンピック委員会)の会長になり、自国開催の五輪に力を傾倒せざるを得なくなって(全柔連の)会長の役割をしっかり果たせなかったことが大きかった」と語った。また、5月31日に行われた検討会メンバーとの会合では「世の中はハラスメントに対してセンシティブになっているが、上が気づいていないことが多い」「会長そのものも評価されることを認識した方がいい」「こういうことが起きた時は気づくチャンス」「透明性の確保は組織で極めて重要。そこができていないから誤解を生んだ」といった趣旨の意見が出たという。

 なお、理事会では次期役員候補35人が承認され、山下会長は理事に名を連ねた。29日の評議員会を経て、新理事による互選で役職が決定するが、山下会長の3期目の再任は有力とみられる。