【ロシア・チェリャビンスク31日発】柔道世界選手権最終日で、2連覇を狙った女子団体は準決勝でフランスに2―3で敗れ、3位決定戦でロシアに3―2で逆転勝利し、銅メダルを獲得。2勝を先取されたが、大将の山部佳苗(23=ミキハウス)まで3連勝で試合をひっくり返した。

 昨年金メダルゼロだった個人戦で金2、銀1、銅2と大逆襲。団体戦銅メダルのおまけもついてきた。南條充寿監督(42)は「田代(未来)以降の3人はいけるかなと思った」と胸を張った。その一方、女子復活のけん引役には意外な名前も挙がっている。昨年は代表に選ばれなかった57キロ級代表の松本薫(26=フォーリーフジャパン)だ。何と松本が代表に“魔法”をかけていたという。

 代表が始動して間もない春の山梨学院大での合宿でのこと。松本勇治コーチ(41)は疲労をほぐすためにと選手にツボ押し器具を購入した。ところが、松本は器具を手に取るや、つえ代わりに「アクシオ!」(呼び寄せる呪文=『来い』の意)などと叫び、代表選手にハリー・ポッターの“魔法”をかけて回ったという。

 松本は映画をすべて観賞しているハリー・ポッターシリーズの大ファン。代表勢の中にも信者は多く、この遊びはまたたく間に浸透し、代表間の仲が深まった。48キロ級で金メダルを獲得した近藤亜美(19=三井住友海上)は「一大ブームを巻き起こしました。雰囲気が変わりましたよ。『アクシオ!』って」と笑顔を見せた。

 個人戦では2回戦敗退に終わったが“魔法使い”松本の活躍で、女子柔道は息を吹き返した。