【ロシア・チェリャビンスク31日発】柔道世界選手権最終日に行われた男子団体戦で、昨年3位の日本は決勝で地元ロシアを3―2で破り、初の金メダルを獲得した。

 立役者になったのは前日の100キロ超級でリネールとの激闘の末、銀メダルに輝いた七戸龍だった。同階級で6大会ぶりにメダルをもたらした男は、2―2で迎えた大将戦に登場。縦四方固めで一本勝ちし、勢いを見せつけた。

 胴上げされた井上康生監督(36)は「(団体戦は)私自身、思い入れがあり、ぜひとも優勝したかった。(胴上げは)格別な思いだった」。団体戦は2020年東京五輪での採用を目指しており、6年後に向けても希望がふくらむ結果となった。

 昨年より個人戦で金メダルを1個減らしたものの、課題の重量級でメダルを奪還するなど実り多い大会に。原動力となったのはやはり、指揮官の存在が大きい。昨年は各選手を“金言”で奮い立たせたが、就任2年目の今年はチーム全体の結束を強化した。コーチ、スタッフとの関係を重視し、合宿などで夜な夜な小宴を開催。本音を言い合い、徹底的に課題を指摘し合った。あるコーチは「別人ですね。酒が増えてます。昔は『なぜ酒なんか飲むんだ?』っていう人だった」と井上監督の変貌ぶりに驚く。

 山下泰裕副会長(57)は「人と人の心をつなぐのに飲みニケーションっていうのは大事。彼が必要性を感じているんでしょうね」と理解を示しつつ、井上監督の体調を気遣った。井上監督は強化だけでなく、柔道界の改革にも携わる。多忙を極めるが「昨年の金メダル3個は紙一重だった」(前出コーチ)との危機感を持ち続けたことが、好結果につながった。