「谷本2世」田代が銅 恩師の死乗り越え躍動

2014年08月29日 16時00分

【ロシア・チェリャビンスク28日発】柔道世界選手権4日目、女子63キロ級は初出場の田代未来(みく、20=コマツ)が銅メダルを獲得した。ジュニア時代から将来を期待され「谷本歩実2世」と呼ばれる大器が、相次ぐ恩師の死を乗り越え、世界の舞台で躍動した。

 

 

 中学時代の試合ぶりを見た全日本柔道連盟の北田典子理事(48=講道学舎塾長)を「今まで女子でこれだけのものを持っている子はいない」とうならせた逸材が、その片鱗を世界でみせつけた。


 初戦から4試合すべて一本勝ちで迎えたジェルビ(イスラエル)との準決勝。田代は寝技のミスから上四方固めで押さえ込まれた。しかし、グウェンド(イタリア)との3位決定戦では肩固めで勝利。「悔しい気持ちでいっぱい。ただ、本当に楽しく柔道ができた」。笑顔はないまま悔し涙を流したが、世界の頂点に肉薄した。


 高校2年の時、左ヒザ前十字靱帯を断裂。1年間も畳から遠ざかった。試練を乗り越えた田代にさらなる悲劇が襲う。小学生の時、初めて柔道を教えてくれた恩師の黒須良友先生、吉田功先生が一昨年、昨年と相次いで亡くなったのだ。


 7月30日のコマツ壮行会で家族からのサプライズビデオレターが公開された。その最後に登場したのが2人の写真だった。「親がその写真を選んだと思うんですけど、本当に大好きだったので頑張ろうと思いました」


 コマツ女子柔道部の松岡義之監督(57)は「谷本2世」と期待する。田代は2月、パリ大会で谷本氏から「私もすごい(練習で手を)使って使って組み手を覚えたから、そのくらいやらなきゃ」と助言された。この言葉を胸に刻み、組み手の練習を反復。


「お皿も持てなくなりました」というまでに自分を追い込んだ。世界選手権の3週間前、左手首の診察を受けるとけんしょう炎、TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)と診断された。それでも田代は包帯を巻きながら胸を張った。

 

「ミッションをクリアしました」


 世界選手権は序章にすぎない。


「手ごたえをしっかり感じることができた」と田代はリオ五輪へ向け、確信に満ちた口調で言い切った。