【柔道世界選手権】宇高菜絵が涙の初制覇

2014年08月28日 16時00分

【ロシア・チェリャビンスク27日発】柔道世界選手権3日目、女子57キロ級はベテランの宇高菜絵(29=コマツ)が涙の初制覇で、3月に他界した天国の父に金メダルをささげた。

 

「天国に一番近い表彰台」の中央から亡き父に勝利を報告した。モンテイロ(ポルトガル)との決勝。延長までもつれた戦いを反則勝ちで制した宇高は「内容は反省点がたくさん。でも、今日は気持ちひとつで戦った」と大粒の涙を流した。

 

 3月25日、柔の道に導いてくれた父の誠二さんが52歳の若さで急逝した。並の選手ならここで競技を中断してもおかしくないだろう。しかし、宇高は違った。悲しみが癒える間もなく、代表権がかかる4月の選抜体重別選手権に出場。「自分のためにやってる。お父さんが生きてても亡くなっててもその思いは変わらない」と心を鬼にして3度目の優勝を飾った。

 

 7月中旬、地元愛媛・西条市に眠る父の墓前に必勝を祈願した。世界選手権には形見も持参。出発前、成田空港で本紙に見せてくれたのが、首にぶら下げた星形のネックレス。「分骨してあるんです。みんな家族は持ってます」。試合もそんな愛する家族と一緒になって戦った。「その場にはいないけど、見てくれているっていうのはある。絶対、会場に来ていると思います」。父の存在が宇高を後押しした。

 

 年齢を重ねても努力を欠かさない。自らインターネットで探して半年間、メンタルトレーニングを受けたこともある。右ヒザの靱帯を痛め、合宿では正座もままならない状態。それでも人一倍声を出し、闘志をあらわにして代表を引っ張った。ロンドン五輪後、所属のコマツでは主将に任命され、責任感が芽生えた。松岡義之監督(57)は「主将になって変わりましたよ」。気持ちはさらに強くなった。

 

「世界選手権は通過点。やっとトップ選手の仲間入りができた」。宇高は安堵の表情とともに、視線を2年後のリオ五輪に向けた。